ユースエール認定は、若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)第 15 条にもとづき、若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。対象は常時雇用する労働者が 300 人以下の会社で、2024 年 9 月末時点で 1,329 社が認定を受けています。
申請の書類を作る前に、自社の直近 3 事業年度の数字が基準に届いているかを確かめるのが先です。基準は 16 項目あり、1 つでも欠けると認定されません。この記事では、基準の一覧、数字で確かめる項目の読み方、提出する書類と提出先、認定のメリットを、厚生労働省と労働局の公表資料から整理します。
認定基準の一覧
厚生労働省と東京労働局の案内では、次の項目をすべて満たすことが求められています。
| 区分 | 基準 |
|---|---|
| 対象 | 常時雇用する労働者が 300 人以下 |
| 採用・育成 | 学卒求人など、若者を対象にした正社員の求人申込みか募集を行っている |
| 採用・育成 | 若者の採用・人材育成に積極的に取り組んでいる |
| 採用・育成 | 人材育成方針と教育訓練計画を策定している |
| 定着 | 直近 3 事業年度の新卒者等の正社員の離職率が 20%以下 |
| 労働時間 | 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が 20 時間以下で、かつ月平均の法定時間外労働が 60 時間以上の正社員が 1 人もいない |
| 休暇 | 前事業年度の正社員の有給休暇の取得率が平均 70%以上、または年間の取得日数が平均 10 日以上 |
| 育児休業 | 直近 3 事業年度に男性の育児休業等の取得者が 1 人以上、または女性の取得率が 75%以上 |
| 情報の公表 | 青少年雇用情報(新卒の採用者数・離職者数、平均継続勤務年数、研修、メンター制度、自己啓発支援、所定外労働時間、有給休暇の取得日数、育児休業の取得状況、女性の管理職の割合など)を公表している |
| 法令の遵守 | 過去 3 年間に認定の取り消しを受けていない、基準に合わず辞退していない |
| 法令の遵守 | 過去 3 年間に新規学卒者の採用内定の取り消しをしていない |
| 法令の遵守 | 過去 1 年間に事業主の都合による解雇や退職勧奨をしていない |
| その他 | 暴力団関係事業主・風俗営業等関係事業主でない、助成金の不支給措置を受けていない、重大な労働関係法令の違反がない |
育児休業の基準には、くるみん認定を受けている場合の扱いなどの例外があります。自社が当てはまるかは、管轄の労働局に確かめてください。
数字で確かめる 4 つの項目
基準のうち、会社によって届く・届かないが分かれるのは、次の 4 つの数字です。申請の前に、この順番で自社の数字を出してみます。
1. 新卒者等の離職率(直近 3 事業年度)
直近 3 事業年度に正社員として採用した新卒者等のうち、何人が辞めたかを数えます。採用した人数が 3〜4 人の場合は、離職者が 1 人以下であれば基準を満たす扱いです。
参考までに、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和 4 年 3 月卒業者)」では、大学卒の就職後 3 年以内の離職率は全体で 33.8%、従業員 30〜99 人の事業所で 41.9%、5〜29 人の事業所で 52.0%でした。20%以下という基準は、中小企業の平均よりかなり低い水準です。届いていない場合は、先に受け入れと定着の仕組みを見直すことになります。
2. 月平均の所定外労働時間(前事業年度)
所定労働時間を超えて働いた時間の月平均です。青少年雇用情報と同じく、前事業年度の所定外労働時間の合計を、各月の在籍者の延べ人数で割って出します。平均が 20 時間以下でも、月平均の法定時間外労働が 60 時間以上の正社員が 1 人でもいれば基準を満たしません。平均と一緒に、いちばん長い人の数字を確かめてください。
3. 有給休暇の取得率・取得日数(前事業年度)
取得率(付与された日数のうち取得した割合)で平均 70%以上、または年間の取得日数で平均 10 日以上のどちらかを満たせば足ります。取得率で届かなくても、日数で届くことがあるので、両方を計算しておきます。
4. 育児休業の取得(直近 3 事業年度)
男性の育児休業等の取得者が 1 人以上、または女性の取得率が 75%以上です。3 年間で対象になる人がいたかどうかも含めて、名簿で確かめます。
情報の公表は「全項目」
青少年雇用情報は、新卒者等を募集する会社に提供が求められている情報です。ふだんの求人では、3 つの類型(募集・採用、職業能力の開発・向上、職場への定着)のそれぞれで 1 項目以上を出せば足りますが、ユースエール認定では全項目を公表していることが基準になっています。
数字を出すだけで、実態は変わりません。ただ、項目の中には「メンター制度の有無」「自己啓発支援の有無」のように、制度を決めていなければ「なし」と書くしかないものがあります。公表の前に、制度として何があるかを棚卸しする機会になります。
提出する書類と提出先
申請は、事業主の住所を管轄する都道府県労働局に、持参か郵送で提出します。電子申請(e-Gov)も使えます。労働局が書類を確認したうえで、認定通知書が交付されます。
東京労働局の案内では、提出する書類は次のとおりです。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 基準適合事業主認定申請書 | 申請の本体 |
| 新規学卒者等採用実績及び定着状況報告書 | 離職率の基準 |
| 人材育成方針・教育訓練計画報告書 | 育成の基準 |
| 労働時間等実績報告書 | 所定外労働時間の基準 |
| 有給休暇取得実績報告書 | 有給休暇の基準 |
| 育児休業等取得実績報告書 | 育児休業の基準 |
| 関係法令遵守状況報告書 | 法令の遵守 |
| 誓約書 | 暴力団関係事業主でないことなど |
| 企業情報報告書 | 公表する青少年雇用情報 |
あわせて、数字の裏づけとして賃金台帳、タイムカードや出勤簿、就業規則、育児休業に関する書類などの添付が求められます。様式と添付書類は労働局によって案内の仕方が違うことがあるので、提出先の労働局の最新の案内を確かめてください。
書類の作り方より先に、台帳が整っているかが問われます。タイムカードと賃金台帳から所定外労働時間を出せない、有給休暇の取得日数を人ごとに数えられない、という状態では、書類を作る段階で止まります。
認定のメリット
厚生労働省は、認定のメリットとして次の 6 つを挙げています。
- ハローワーク等での重点的な PR
- 認定企業に限った就職面接会等への参加
- 商品や広告などへの認定マークの使用
- 日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」で、基準利率から 0.65%引き下げた融資
- 公共調達の総合評価落札方式等での加点評価
- 一部の地方公共団体の事業(補助金、奨励金、融資制度等)での優遇措置
採用の面では、1〜3 が直接効きます。求人票や採用ページに認定マークを載せられると、若者雇用促進法の基準で離職率・残業・休暇を確かめられた会社だと、求職者に一目で伝わります。
申請の前の確かめ表
| 順番 | 確かめること | 見る資料 |
|---|---|---|
| 1 | 常時雇用する労働者が 300 人以下か | 労働者名簿 |
| 2 | 直近 3 事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数 | 労働者名簿・採用の記録 |
| 3 | 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間と、月 60 時間以上の人の有無 | タイムカード・賃金台帳 |
| 4 | 前事業年度の有給休暇の取得率と取得日数 | 年次有給休暇管理簿 |
| 5 | 直近 3 事業年度の育児休業の取得者 | 育児休業の申出書・名簿 |
| 6 | 人材育成方針と教育訓練計画があるか | 社内の規程・計画 |
| 7 | 青少年雇用情報の全項目を出せるか | 上の 2〜6 と制度の一覧 |
| 8 | 過去 3 年の内定取り消し、過去 1 年の会社都合の解雇・退職勧奨がないか | 退職の記録 |
数字が届いていない項目がある場合は、その項目を改善してから次の事業年度の数字で申請することになります。個別の数字が基準に当たるかどうかの判断は、管轄の労働局に確かめてください。
まとめ
- ユースエールは、常時雇用 300 人以下の中小企業を対象にした、若者の採用・育成に積極的で雇用管理が優良な会社の認定制度。2024 年 9 月末時点で 1,329 社
- 基準は 16 項目。数字で分かれるのは、新卒者等の離職率 20%以下・所定外労働時間月 20 時間以下(60 時間以上の人がいない)・有給休暇 70%以上か 10 日以上・育児休業の 4 つ
- 青少年雇用情報は、ふだんは類型ごとに 1 項目以上だが、認定では全項目の公表が基準
- 申請先は管轄の都道府県労働局。書類の前に、名簿・タイムカード・賃金台帳・有給休暇の管理簿から数字を出せるかを確かめる
参考資料
- 厚生労働省「ユースエール認定制度」
- 厚生労働省「ユースエール認定制度のご紹介」(若者雇用促進総合サイト)
- 東京労働局「ユースエール認定制度(事業主向けページ)」
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和 4 年 3 月卒業者)」(2025 年 10 月 24 日公表)
- 青少年の雇用の促進等に関する法律(e-Gov 法令検索)