離職率には、決まった 1 つの計算式があるわけではありません。分子に誰を数え、分母に誰を置くかで、同じ会社でも数字は大きく変わります。「うちの離職率は平均より高いのか」を確かめるには、まず自社の数字と、比べる相手の数字が同じ定義かどうかをそろえる必要があります。
この記事では、厚生労働省が公表している代表的な 3 つの数字の定義と、自社で計算するときの決め方を整理します。
公表されている離職率は 3 種類ある
採用や定着の話で出てくる離職率は、おおむね次の 3 つです。
| 数字 | 出どころ | 分子 | 分母 |
|---|---|---|---|
| 年間の離職率 | 雇用動向調査 | 1 年間に離職した常用労働者 | 1 月 1 日現在の常用労働者数 |
| 新卒の 3 年以内の離職率 | 新規学卒就職者の離職状況 | そのうち就職後 3 年以内に離職した人 | ある年の 3 月に卒業して就職した人 |
| 新卒者等の採用者数・離職者数 | 青少年雇用情報・ユースエール | 直近 3 事業年度に採用した新卒者等のうち離職した人 | 直近 3 事業年度に採用した新卒者等 |
1 つ目は会社全体の出入りを見る数字、2 つ目と 3 つ目は採用した人が残っているかを見る数字です。前者の全国平均は 1 割台、後者は 3 割台と、桁が違って見えるのはこのためです。
1. 年間の離職率(雇用動向調査)
計算式
厚生労働省「令和 6 年雇用動向調査結果の概況」(2025 年 8 月 26 日公表)は、離職率を次の式で出しています。
離職率(%)= 1 年間の離職者数 ÷ 1 月 1 日現在の常用労働者数 × 100
ここでいう常用労働者は、期間を定めずに雇われている人と、1 か月以上の期間を定めて雇われている人です。正社員だけでなく、パートタイムや有期契約の人も含みます。
離職者には、退職や解雇のほか、他の企業への出向・出向からの復帰も含まれ、同じ企業内の他の事業所への異動は含まれません。定年や契約期間の満了による離職も離職者に入ります。
全国の数字
令和 6 年の結果は次のとおりです。
| 区分 | 離職率 |
|---|---|
| 全体 | 14.2% |
| 男性 | 12.6% |
| 女性 | 16.0% |
| 一般労働者(パートタイム以外) | 11.5% |
| パートタイム労働者 | 21.4% |
産業別では、一般労働者の離職率は「サービス業(他に分類されないもの)」19.0%、「宿泊業,飲食サービス業」18.1%の順に高く、パートタイム労働者では「宿泊業,飲食サービス業」29.9%、「サービス業(他に分類されないもの)」23.8%の順に高くなっています。
離職の理由別に見ると、「個人的理由」(結婚、出産・育児、介護・看護、その他の個人的理由の合計)による離職率は 10.7%、「事業所側の理由」(経営上の都合、出向、出向元への復帰の合計)によるものは 0.8%でした。
自社で計算するときの注意
- 分母は年初の人数にそろえる。年末の人数や年間の平均を使うと、全国の数字と比べられなくなります。
- 正社員とパートを分けて出す。全国の数字も一般とパートで 2 倍近く違うので、合算した自社の数字を全体の 14.2% と比べても判断を誤ります。
- 年の途中で入って、その年のうちに辞めた人は、分子には入るのに分母には入りません。採用を増やした年ほど離職率が高く出るのはこのためです。
2. 新卒の 3 年以内の離職率
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和 4 年 3 月卒業者)」(2025 年 10 月 24 日公表)では、就職後 3 年以内の離職率は大学卒 33.8%、高校卒 37.9%、短大等 44.5%でした。
この数字は、ある年に卒業して就職した人を 1 つの集団として追いかけ、そのうち 3 年以内に辞めた人の割合を出したものです。雇用保険の加入の記録から新規学卒者を特定して追いかけています。分母はその年に就職した人だけで、在籍している他の社員は入りません。
事業所の規模で大きく違い、大学卒では次のとおりでした。
| 事業所の規模(大学卒) | 3 年以内の離職率 |
|---|---|
| 5 人未満 | 57.5% |
| 5〜29 人 | 52.0% |
| 30〜99 人 | 41.9% |
| 100〜499 人 | 33.9% |
| 500〜999 人 | 31.5% |
| 1,000 人以上 | 27.0% |
自社の新卒の定着を比べるなら、年間の離職率ではなく、この形で自社の数字を出し、同じくらいの規模の数字と比べます。
3. 青少年雇用情報とユースエールの数字
若者雇用促進法にもとづく青少年雇用情報では、直近 3 事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数を、割合ではなく人数で示します。求職者は、この人数から自分で割合を出して読むことになります。
中小企業を対象にしたユースエール認定では、直近 3 事業年度に正社員として採用した新卒者等の離職率が 20%以下であることが基準の 1 つです。採用した人数が 3〜4 人の場合は、離職者が 1 人以下であれば基準を満たす扱いになっています。
どちらも「3 事業年度にわたって採用した人を合計し、そのうち何人辞めたか」を見るもので、2 つ目の数字と考え方は同じです。
自社の離職率を決めて出す手順
計算の仕方がぶれると、年ごとの比較ができません。次の順で、自社の定義を 1 度決めて書き残しておきます。
- 何を見たいかを決める。会社全体の出入りなら年間の離職率、採用した人が残っているかなら入社した年ごとの離職率です。両方出しておくのが基本です。
- 対象の範囲を決める。正社員だけか、パート・有期契約を含めるか。含めるなら分けて出します。
- 離職者に数える範囲を決める。定年、契約期間の満了、グループ会社への出向を含めるか。全体の数字とは別に、自己都合による離職だけの数字も出しておくと、定着の課題が見えやすくなります。
- 期間と分母を決める。年間の離職率なら「1 月 1 日〜12 月 31 日の離職者 ÷ 1 月 1 日の在籍者」、事業年度で見るなら期首の在籍者を分母にします。
- 分子と分母の人数を必ず残す。割合だけを残すと、あとで定義を確かめられません。
たとえば年初の在籍者が 30 人で、その年に 6 人が辞めていれば、年間の離職率は 20% です。ただし 6 人のうち 2 人が定年であれば、それを除いた離職率は約 13% になります。どちらの数字を使っているかを書き添えるだけで、社内の議論がかみ合いやすくなります。
少人数の会社で気をつけること
社員 10 人の会社では、1 人辞めれば離職率は 10%、2 人で 20% です。年ごとに大きく上下するので、次の点に気をつけます。
- 1 年の数字で判断せず、3〜5 年の推移で見る
- 割合と一緒に人数を並べる
- 入社した年ごとの離職率は、入社してまだ 3 年たっていない年を、3 年たった年と同じ列で比べない
採用したばかりの年は、まだ辞めるだけの時間がたっていないため、離職者が少なく出ます。
求人票や採用ページに載せるとき
離職率を求職者に示すなら、どの期間・どの人を対象にした数字かを必ず書き添えます。「離職率 5%」とだけ書くと、正社員だけなのか、年間の数字なのか、新卒の 3 年以内の数字なのかが分かりません。
求人の表示には、職業安定法で虚偽の表示や誤解を生じさせる表示の禁止がかかっています。計算の仕方を変えて低く見せた数字を、全国平均と並べて載せるような表示は避けます。青少年雇用情報の形(直近 3 事業年度の採用者数と離職者数)で人数を示すのが、読み手にとって最も確かめやすい出し方です。
まとめ
- 離職率は分子と分母の取り方で数字が変わる。比べるときは同じ定義の数字どうしで比べる
- 雇用動向調査の年間の離職率は「1 年間の離職者数 ÷ 1 月 1 日現在の常用労働者数」。令和 6 年は全国で 14.2%(一般 11.5%、パート 21.4%)
- 新卒の 3 年以内の離職率は、就職した年の人だけが分母。令和 4 年 3 月卒の大学卒で 33.8%、規模が小さいほど高い
- 青少年雇用情報は直近 3 事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数を人数で示す。ユースエールは離職率 20%以下が基準
- 自社の定義を 1 度決めて書き残し、分子と分母の人数を毎年残す。少人数の会社は 3〜5 年の推移で見る