求人を出す会社は、職業安定法第 5 条の 4 により、虚偽の表示と誤解を生じさせる表示をしてはならず、募集の情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。2022 年 10 月 1 日に施行された改正で、求人媒体や職業紹介事業者だけでなく、求人を出す会社そのものにもこの義務がかかっています。

「うそは書いていない」だけでは足りません。書いてあることは事実でも、読んだ人が実際より良い条件だと受け取る表示や、募集を終えたのに残っている求人も、この決まりの対象です。この記事では、厚生労働省の Q&A と指針に挙がっている具体例と、求人を出している場所の点検の仕方を整理します。

決まりの中身

職業安定法第 5 条の 4 は、求人を出す会社(法律の言葉では「労働者の募集を行う者」)を含む事業者に、次の 2 つを求めています。

項求められること
第 1 項広告などで求人の情報を出すとき、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならない
第 2 項募集の情報を正確かつ最新の内容に保つための措置を講じる

「広告など」には、新聞・雑誌などの刊行物への掲載や文書の掲出・配布のほか、厚生労働省令で定める方法が含まれます。自社の採用ページ、求人媒体、ハローワーク、SNS での募集の発信など、求人の情報を載せているすべての場所が対象になると考えて点検するのが安全です。

厚生労働省の Q&A は、求人を出す会社について「労働者の募集に関する情報等について一義的な責任を有する」としています。求人媒体に載せている情報でも、中身の正しさに責任を持つのは求人を出す会社です。

「虚偽の表示」の例

Q&A では、求人の情報と実際の労働条件を意図して違えた場合などを虚偽の表示とし、具体的に次の例を挙げています。

  • 実際に求人を行う企業と別の企業の名前で求人を出す
  • 「正社員」とうたいながら、実際には「アルバイト・パート」の募集をする
  • 基本給〇万円と表示しながら、実際にはそれより低い賃金を予定している
  • 実際には採用の予定がない求人を出す

一方で、応募者との合意にもとづいて、求人の情報から実際の労働条件を変えることになった場合は、虚偽の表示にはあたらないとされています。ただし、条件を変えるときは、労働条件の明示のやり直しが必要です(「募集時の労働条件の明示」の記事で扱っています)。

「誤解を生じさせる表示」の例

虚偽でなくても、一般的・客観的に見て誤解を生じさせる表示は禁じられています。厚生労働省の指針(第 4 の 2)は、次の点に気をつけるよう求めています。

気をつける点Q&A に挙がっている例
関係会社・グループ会社と、実際に雇う会社を混同させないグループ会社の製品開発の実績を大きく載せ、求人企業の実績のように見せる
雇用契約の募集と、フリーランスなどの請負の募集を混同させない請負の案件であることを示さず、労働者の募集と同じ表示をする
賃金を実際より高く見せない給与の高い社員の基本給を例に出し、全員の基本給のように見せる/固定残業代の基礎になる時間数を示さず、基本給に含めて表示する
職種・業種を実際の仕事とかけ離れた名前にしない営業が中心の仕事を「事務職」と表示する

賃金の幅とモデル収入

「月給 25 万円〜35 万円」のような幅のある表示や、「モデル収入例」を並べて書くこと自体は認められています。Q&A は、できる限り予定している額を具体的に書くのが望ましいとしたうえで、次のような表示は誤解を生じさせる表示にあたるとしています。

  • モデル収入例なのに、必ず払われる基本給のように見せる
  • 幅の上限を、実際より高い賃金が払われる可能性があるように見せる

幅を書くなら、上限が実際に払っている、または払う予定のある額かどうかを、賃金台帳や賃金規程と突き合わせて確かめます。

「正確かつ最新」に保つための 4 つの対応

指針(第 4 の 3)は、求人を出す会社がとる対応として、次の 4 つを挙げています。これらに限らず、結果として情報を正確かつ最新に保つことが求められます。

  1. 募集を終えた、または内容を変えたら、速やかに掲載を終える・内容を変える
  2. 求人媒体を使っている場合は、終了や変更を媒体の掲載にも反映するよう依頼する
  3. いつ時点の求人の情報かを明らかにする
  4. 求人媒体から訂正や変更を頼まれたら、速やかに対応する

中小企業で起きやすいのは、1 と 2 の抜けです。ハローワークに出した求人は締め切ったのに、自社の採用ページや以前に使った媒体に同じ求人が残っている、給与を改定したのに古い額のまま載っている、という形です。採用ページの転載や、求人検索サイトへの自動の掲載があると、自社で把握していない場所に情報が残ることもあります。

求人を出している場所の点検の仕方

決まりを守る近道は、求人の情報がどこに載っているかを 1 枚の表にまとめることです。

列書くこと
掲載場所自社の採用ページ、ハローワーク、求人媒体、求人検索サイト、SNS、学校への求人票など
載せた日・時点いつの情報か
担当更新と終了を誰がするか
更新の仕方自社で直せるか、媒体に依頼が要るか
最後に確かめた日月に 1 回など、決めた頻度で確かめる

表ができたら、次の順で中身を確かめます。

  1. 会社名・所在地・連絡先・仕事の内容・就業場所・賃金が、すべての場所で同じか
  2. 賃金の額・幅・手当・固定残業代の書き方が、賃金規程や実際の支給と合っているか
  3. 職種名が、実際の仕事の中心と合っているか
  4. グループ会社の実績や写真を、自社のもののように載せていないか
  5. 締め切った求人が残っていないか。時点が書かれているか

食い違いが見つかったら、正しい方にそろえ、媒体に載っているものは媒体に訂正を依頼します。会社の情報が載っている場所を洗い出して 1 つの正本にそろえる作業は、応募への対応を整える作業とも重なります。

違反したときの扱い

厚生労働省の Q&A は、法違反があった場合、個別の事案によるとしつつ、一般的にはまず是正指導が行われ、是正指導に従わないなど悪質なケースでは、改善命令などの行政処分になるとしています。

また、職業安定法第 65 条第 9 号は、虚偽の広告をしたり、虚偽の条件を示したりして労働者の募集を行った場合を、6 か月以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金の対象にしています。

自社の表示が決まりにあたるかどうかの判断に迷うときは、都道府県労働局の需給調整事業の担当課・室に確かめてください。

まとめ

  • 職業安定法第 5 条の 4 により、求人を出す会社は、虚偽の表示と誤解を生じさせる表示をしてはならず、募集の情報を正確かつ最新に保つ必要がある(2022 年 10 月 1 日施行)
  • 誤解を生じさせる表示の例は、グループ会社との混同、請負との混同、賃金を高く見せる表示(固定残業代の時間数を示さないものを含む)、実際とかけ離れた職種名
  • 賃金の幅やモデル収入例は書いてよいが、上限や例を実際より高く見せない
  • 募集を終えたら速やかに掲載を終え、媒体にも依頼する。時点を明らかにする
  • 求人の情報が載っている場所を 1 枚の表にまとめ、月に 1 回など決めた頻度で確かめる

参考資料