求人を出すときに示す労働条件は、職業安定法第5条の3で「明示しなければならない」と定められた法定の義務です。明示する項目は同法施行規則第4条の2第3項に列挙されており、2024年(令和6年)4月1日からは「従事すべき業務の変更の範囲」「就業の場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準(更新上限を含む)」の3つが加わりました。

明示の時期は、指針(平成11年労働省告示第141号)により、原則として応募者と最初に接触する時点(面接など)までに、すべての条件を示すことが求められています。面接の後で条件を変えて契約する場合は、変更した内容をあらためて明示する義務があります(法第5条の3第3項)。

この記事では、求人票・募集要項・求人広告を作る担当者が、どの項目を、いつ、どの方法で示せばよいかを、条文と厚生労働省の資料にもとづいて整理します。

明示の義務がかかる4つの場面

労働条件の明示は、募集から契約までの間に複数の場面で求められます。根拠となる条文が場面ごとに違うため、まず全体を押さえておきます。

場面誰が誰に根拠
求人の申込み求人者 → ハローワーク・職業紹介事業者職業安定法第5条の3第2項
募集・紹介自社で募集する企業・ハローワーク・紹介事業者 → 応募者同条第1項
契約を結ぶ前に条件を変えるとき求人者・募集する企業 → 契約の相手方になろうとする人同条第3項
労働契約の締結使用者 → 労働者労働基準法第15条、同法施行規則第5条

ハローワークに求人を出す場合は、ハローワークへの申込み(第2項)とハローワークから応募者への明示(第1項)の両方に関わります。自社の採用サイトや求人広告で直接募集する場合は、自社が第1項の義務を負います。

明示しなければならない項目

職業安定法施行規則第4条の2第3項が定める明示事項は次のとおりです。記載例は、厚生労働省のリーフレット「求人企業の皆様へ」の例を参考にしています。

項目内容記載の例
業務の内容従事すべき業務と、その変更の範囲(雇入れ直後)一般事務 (変更の範囲)会社の定める業務
契約期間期間の定めの有無、ある場合はその期間期間の定めなし
試用期間有無と期間試用期間あり(3か月)
有期契約の更新の基準更新する場合の基準、通算契約期間または更新回数の上限契約の更新あり(業務量・勤務成績により判断)、通算契約期間の上限4年
就業場所就業の場所と、その変更の範囲(雇入れ直後)本社 (変更の範囲)本社および全国の支社
労働時間始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日9:00〜18:00、休憩60分、時間外労働あり(月平均20時間)、土日祝休み
賃金賃金の額(臨時の賃金・賞与などを除く)月給25万円(試用期間中は月給20万円)
加入保険健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金
募集者の氏名または名称雇用する事業主の名称○○株式会社
派遣労働者として雇用する旨派遣労働者として雇う場合のみ雇用形態:派遣労働者
受動喫煙の防止措置就業場所での受動喫煙を防ぐための措置屋内禁煙

太字の3点が2024年4月1日に追加された事項です(令和5年厚生労働省令第89号による改正)。有期契約の更新基準は、更新する場合がある有期契約の募集に限って明示します。

2024年4月に追加された「変更の範囲」とは

「変更の範囲」は、雇い入れた直後の業務や勤務地だけでなく、配置転換などで将来変わりうる範囲を示すものです。厚生労働省のリーフレットは、契約期間中に変わりうる範囲を示すと説明しています。

  • 業務の例:(雇入れ直後)法人営業 (変更の範囲)製造業務を除く当社業務全般
  • 就業場所の例:(雇入れ直後)渋谷営業所 (変更の範囲)都内23区内の営業所

転勤や職種変更の可能性があるのに「変更なし」と書くと、入社後の配置転換の場面で説明と実態が食い違います。逆に、実際には転勤がないのに「全国」と書くと応募をためらわせます。自社の就業規則と過去の異動の実態を見て、実際に起こりうる範囲を書くのが基本です。

有期契約の更新上限

有期契約で更新の上限(通算契約期間や更新回数)を設ける場合は、募集の段階でその上限を示します。リーフレットは、「諸般の事情を総合的に考慮した上で判断する」のような抽象的な書き方ではなく、「勤務成績、態度により判断する」「会社の経営状況により判断する」など、具体的に書くことが望ましいとしています。

賃金と労働時間は書き方まで決まっている

指針(平成11年労働省告示第141号)第三の一(三)は、賃金と労働時間について、明示の中身をさらに具体的に定めています。

賃金について明示すること

  • 賃金形態(月給・日給・時給などの区分)
  • 基本給
  • 定額的に支払われる手当
  • 通勤手当
  • 昇給に関する事項

固定残業代を採用している場合に明示すること(名称を問わず、一定時間分の時間外・休日・深夜労働の割増賃金を定額で払う仕組み)

  • 固定残業代の計算方法(固定残業時間と金額を明らかにする)
  • 固定残業代を除いた基本給の額
  • 固定残業時間を超える時間外・休日・深夜労働分の割増賃金を追加で支払うこと

労働時間について明示すること

  • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日
  • 裁量労働制(労働基準法第38条の3・第38条の4)でみなし時間を適用する場合はその旨
  • 高度プロフェッショナル制度(同法第41条の2)の対象になる場合はその旨

指針は、これらの明示を「虚偽又は誇大な内容としないこと」も求めています。固定残業代を含めた総額だけを大きく見せる書き方は、後述の的確表示の点からも避けるべきです。

試用期間中に条件が違う場合

試用期間中と試用期間後で業務や賃金などが異なる場合は、それぞれの条件を示さなければなりません(施行規則第4条の2第6項)。また指針は、有期契約が実質的に試用期間の性質を持つ場合でも、試用期間後の条件ではなく、その有期契約の期間の条件を明示するよう求めています。

明示の時期と方法

最初に接触する時点までに、すべて示す

指針第三の一(四)は、原則として応募者と最初に接触する時点までに、業務の内容等を明示するよう定めています。厚生労働省のリーフレットは、求人広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合に一部を別途明示することは可能としつつ、その場合も原則として面接など最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示する必要があると説明しています。一部を別途明示するときは、その旨を併せて示します。

方法は書面が原則

明示の方法は、施行規則第4条の2第4項により次のいずれかです。

  1. 書面の交付
  2. 応募者が希望した場合に限り、ファクシミリ、または電子メールなど受信者を特定して送る方法(受信者が記録を出力して書面にできるもの)

求人票や募集要項を手渡し・郵送・メールで送る運用が一般的です。口頭だけで条件を伝え、書面を渡さない運用は要件を満たしません。

面接の後で条件を変えるとき(変更明示)

選考の過程で、当初示した条件と異なる内容で契約することになった場合は、職業安定法第5条の3第3項と施行規則第4条の2第1項・第2項にもとづき、次の4つの場合に、その内容を明示しなければなりません。

場合
変更する「月給25万円」と示していたが「月給23万円」で契約する
特定する「月給22万〜28万円」と示していたが「月給25万円」に決める
削除する「賞与あり」と示していたが賞与の定めをなくす
追加する当初示していなかった「営業手当」を加える

明示の方法について指針は、当初の明示と変更内容を対照できる書面を渡すことが望ましいとし、労働基準法第15条にもとづく書面(労働条件通知書など)で変更点に下線を引く、着色する、注記するといった方法も認めています。削除する場合は、削除前の内容も併せて記載します。

指針はさらに次の点を定めています。

  • 応募者が契約を結ぶかどうか考える時間を確保できるよう、可能な限り速やかに変更明示を行う
  • 変更の理由を聞かれたら適切に説明する
  • 当初の明示は、そのまま労働契約の内容になることが期待されている。安易に変更・削除・追加してはならない
  • 新卒者(学校卒業見込者等)については、当初の明示を変更・削除・追加することは不適切とされている
  • 変更した場合は、求人票などの内容を検証し、修正する

また、施行規則第4条の2第7項により、当初明示した内容の記録は、その募集が終わる日(その後に契約を結ぶ場合は契約を結ぶ日)まで保存しなければなりません。

求人広告は「正確かつ最新」に保つ

求人広告や採用サイトに載せる情報には、職業安定法第5条の4の「的確な表示」の義務がかかります。

  • 虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならない(同条第1項)
  • 自社で募集する企業は、募集の情報を正確かつ最新の内容に保たなければならない(同条第2項)

指針第四は、誤解を生じさせる表示の例として、関係会社と混同させる表示、雇用の募集と請負の受注者の募集を混同させる表示、賃金を実際より高額であるかのように見せる表示、実際の業務と著しくかけ離れた職種名を挙げています。また、募集を終えたり内容を変えたりしたときは速やかに掲載を終了・変更し、求人サイトなどにも終了・変更を依頼すること、情報の時点を明らかにすることを求めています。

複数の求人サイトに同じ求人を出している場合、給与や勤務時間を改定したのに一部のサイトだけ古いまま、という状態が起こりやすくなります。掲載先の一覧を作り、条件を変えたらすべての掲載先を直す運用にしておくと安全です。

契約締結時の明示(労働基準法)とのつながり

採用が決まった後は、労働基準法第15条により、契約締結時に改めて労働条件を明示します。賃金、労働時間、契約期間、就業場所と業務(それぞれの変更の範囲を含む)などは書面(労働者が希望すればメールなど)で示すことが必要で(同法施行規則第5条)、2024年4月からは契約締結時にも変更の範囲の明示が求められています。

同条第2項は、明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に契約を解除できると定めています。募集時の明示、変更明示、労働条件通知書の3つを食い違いなくつなぐことが、入社後のトラブルと早期離職を防ぐ基本になります。

求人を出す前のチェックリスト

  • 業務の内容に、雇入れ直後の業務と変更の範囲の両方を書いた
  • 就業場所に、雇入れ直後の場所と変更の範囲の両方を書いた
  • 有期契約の場合、更新の有無・判断基準・更新上限を書いた
  • 試用期間の有無と期間、試用期間中に条件が違う場合はその内容を書いた
  • 賃金形態、基本給、定額の手当、通勤手当、昇給を書いた
  • 固定残業代がある場合、時間数・金額・除いた基本給・超過分の追加支払いを書いた
  • 始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩、休日を書いた
  • 加入保険、雇用主の名称、受動喫煙防止措置を書いた
  • 面接の前に、すべての条件を書面またはメールで応募者に渡す流れになっている
  • 掲載中の求人広告の一覧があり、条件を変えたらすべて直す担当が決まっている

まとめ

  • 募集時の労働条件の明示は職業安定法第5条の3の義務。項目は施行規則第4条の2第3項に列挙されている
  • 2024年4月1日から、業務と就業場所の変更の範囲、有期契約の更新基準と上限が追加された
  • 原則として応募者と最初に接触する時点までに、書面ですべての条件を示す
  • 面接後に条件を変えるときは変更明示が必要。当初の明示は「そのまま契約の内容になる」前提で作る
  • 求人広告は虚偽・誤解を生む表示が禁止され、正確かつ最新に保つ義務がある

個別の求人が要件を満たしているかは、ハローワークや都道府県労働局の窓口でも相談できます。

参考資料