採用単価は「一定期間に採用にかかった費用の合計 ÷ その期間の採用人数」で出します。計算そのものは単純ですが、何を費用に含めるか、何人で割るかで数字が大きく変わります。まず自社のルールを決め、経路ごとに同じ方法で計算し続けることが、採用費を下げる出発点です。

この記事では、次の順で整理します。

  • 採用単価の基本の式と、含める費用
  • 経路別に計算する表
  • 入社人数ではなく定着人数で見る方法
  • 採用単価を下げる手順
  • 有料の経路を使うときに確かめる公開情報

採用単価の基本の式

採用単価 = 採用にかかった費用の合計 ÷ 採用人数

要素決めておくこと
期間年度・半期・四半期など。費用が出た時期と採用が決まった時期がずれるため、期間を決めて集計する
費用の範囲社外に払う費用だけか、社内の人件費も含めるか
採用人数内定人数か、入社人数か。辞退がある以上、入社人数で割るのが実態に近い
単位全体か、職種別か、経路別か

含める費用の一覧

採用の費用は、社外に払う費用と、社内でかかる費用に分けられます。

区分費用の例
社外に払う費用求人広告・求人サイトの掲載料、人材紹介の手数料、採用サイトの制作・運用費、説明会・合同面接会の出展料、会場費、適性検査の利用料、応募者の交通費の負担、採用パンフレットなどの印刷費
社内でかかる費用求人票の作成、応募者への連絡、書類選考、面接、社内の調整にかかった時間 × 担当者の時間あたりの人件費

社内の費用は、次の式で見積もります。

社内の費用 = 採用業務にかかった時間の合計 × 担当者の時間あたりの人件費

面接1回あたりの時間(準備と評価の記入を含む)× 面接官の人数 × 面接の回数、のように分けて数えると、把握しやすくなります。

社外費用だけの単価と、全体の単価を分ける

ハローワークへの求人は、職業安定法第8条により無料です。縁故や社員からの紹介も、社外に払う費用はほとんどかかりません。そのため、社外費用だけで比べると、これらの経路の単価はゼロに近くなります。一方で、応募者対応や面接には社内の時間がかかっています。

経路を公平に比べるには、次の2つを分けて記録します。

  1. 社外費用の採用単価: 予算の管理に使う
  2. 社内費用を含めた採用単価: 経路どうしを比べるのに使う

経路別に計算する

採用単価は、会社全体の1つの数字だけでは、どこを直せばよいかがわかりません。経路ごと、できれば職種ごとに計算します。

経路社外費用社内の時間応募数面接数入社数1年後の在籍数社外費用の単価全体の単価
ハローワーク
求人サイトA
人材紹介
自社サイト
縁故・社員紹介
合計

この表を四半期ごとに更新すると、次のことがわかります。

  • 費用のわりに応募が少ない経路
  • 応募は多いが、面接や入社につながっていない経路(社内の時間だけがかかっている)
  • 入社はしたが、1年以内に辞める人が多い経路

応募から入社までの各段階の通過の割合(歩留まり)を見ると、どこで人が減っているかがわかります。

入社人数ではなく「定着人数」で見る

採用した人が早く辞めると、同じ職種でもう一度採用することになり、その分の採用費が重ねてかかります。そこで、次の指標もあわせて見ます。

定着を加えた採用単価 = 採用にかかった費用の合計 ÷ 一定期間後(例: 1年後)も在籍している人数

早期離職がどれくらい起きているかは、公的な統計で目安がわかります。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は、高校卒が37.9%、大学卒が33.8%でした。事業所の規模が小さいほど高く、たとえば大学卒では、従業員5人未満の事業所で57.5%、5〜29人で52.0%、30〜99人で41.9%、1,000人以上で27.0%です。

事業所の規模高校卒の3年以内離職率大学卒の3年以内離職率
5人未満63.2%57.5%
5〜29人54.6%52.0%
30〜99人45.2%41.9%
100〜499人36.7%33.9%
500〜999人29.9%31.5%
1,000人以上26.3%27.0%

中小企業ほど、入社人数で割った単価だけを見ていると、実際の費用を小さく見積もることになります。

採用単価を下げる手順

することねらい
1経路別の表をつくり、費用と結果を集計するどこにお金と時間を使っているかを見える化する
2無料の経路を土台にするハローワークにはすべての募集で求人を出しておく
3求人票の中身を見直す応募の数と質を上げ、面接にかかる時間を減らす
4選考を短くする辞退による「入社0人」を減らす
5有料の経路を職種で絞る無料の経路で採れない職種だけに使う
6定着を上げるもう一度の採用を減らす

無料の経路を土台にする

ハローワークは、求人の公開・紹介・面接会の開催・求人条件の相談などを無料で行っています。ハローワークインターネットサービスの1日あたりのアクセス数は約240万件(令和5年度末)とされています。ハローワークの紹介を経た採用は、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金など、職業紹介を要件とする助成金の対象になりうる点も、実質の費用に影響します(要件は助成金ごとに確かめます)。出し方はハローワーク求人の出し方で整理しています。

求人票の中身を見直す

ハローワークは、「仕事の内容」欄の記載が充実するにしたがって応募者が増える結果が出ていると説明し、賃金は最高額ではなく平均的な実態を書くよう求めています。仕事の中身と条件が正確に伝わると、条件が合わない応募や、入社後の「思っていたのと違う」による早期離職が減り、面接の時間と再採用の費用の両方が下がります。書き方は求人票の書き方で扱っています。

面接の時間を減らす

評価項目と質問を前もって決めておくと、面接の回数や時間を必要以上に増やさずに済みます。面接の設計は面接の質問の作り方で整理しています。

有料の経路を使うときに確かめる公開情報

人材紹介の手数料と定着の実績

有料職業紹介事業者の手数料は、職業安定法第32条の3により、厚生労働省令で定める上限の範囲で取る方法か、あらかじめ届け出た手数料表にもとづいて取る方法のどちらかに限られます。

また、職業安定法第32条の16第3項と同法施行規則第24条の8により、有料職業紹介事業者には次の情報をインターネットで公開する義務があります。

公開する情報内容
就職者の数紹介で就職した人の数と、そのうち無期雇用で就職した人の数
早期の離職者の数無期雇用で就職した人のうち、6か月以内に離職した人の数(解雇などを除く)
手数料に関する事項取扱職種ごとの、常用就職1件あたりの平均手数料率の実績を含む
返戻金制度早期に離職した場合に手数料の一部を返す制度の有無と内容

これらは厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で事業者ごとに確かめられます。手数料率だけでなく、6か月以内の離職者の数と返戻金制度をあわせて見ると、定着を加えた実質の単価を見積もれます。手数料の仕組みは別の記事で詳しく扱います。

求人サイト・求人広告の料金

求人サイトや求人広告は、掲載期間に対して料金がかかるもの、応募や採用に応じて料金がかかるものなど、事業者ごとに料金体系が違います。職業安定法の指針(平成11年労働省告示第141号)は、募集情報等提供事業を行う者に対し、利用に関連して募集する側が負担する料金・違約金などの金額、発生する条件、解除の方法を含む契約内容を、書面や電子メールなど再読できる方法であらかじめ明示するよう求めています。契約の前に、次のことを書面で確かめます。

  • 料金がかかる条件(掲載・応募・採用のどれで発生するか)
  • 自動更新の有無と、解約の方法
  • 違約金の有無と金額

チェックリスト

  • 採用単価の期間、費用の範囲、割る人数(入社人数)を決めた
  • 社外費用と社内費用を分けて記録している
  • 経路別・職種別に、費用・応募数・面接数・入社数・1年後の在籍数を集計している
  • 定着を加えた採用単価も計算している
  • ハローワークにはすべての募集で求人を出している
  • 求人票の仕事内容と賃金を、実態に合わせて見直した
  • 面接の評価項目と質問を前もって決め、面接の回数を必要な分に絞った
  • 人材紹介を使うときは、人材サービス総合サイトで手数料率・6か月以内の離職者数・返戻金制度を確かめた
  • 求人サイトの契約前に、料金の発生条件・自動更新・違約金を書面で確かめた

まとめ

  • 採用単価は「費用の合計 ÷ 採用人数」。費用の範囲と割る人数を決め、同じ方法で計算し続ける
  • 社外費用だけの単価と、社内の時間を含めた単価を分けて記録する
  • 経路別・職種別に集計し、定着人数で割った単価もあわせて見る
  • 中小企業は早期離職の割合が高く、入社人数だけで見ると費用を小さく見積もる
  • 無料のハローワークを土台にし、求人票と面接を見直し、有料の経路は公開情報を確かめて絞る

参考資料