人材紹介の手数料は、紹介会社が自由に決めてよいものではありません。職業安定法第32条の3により、手数料を取れるのは「厚生労働省令で定める上限の範囲で取る(上限制)」か「あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表にもとづいて取る(届出制)」のどちらかに限られ、求職者からは原則として取れません。そのうえで、紹介会社には手数料の実績や紹介した人の定着の状況を公開する義務があり、求人する側はそれを見て比べられます。

この記事では、人材紹介を使う前に知っておきたいことを、次の順で整理します。

  • 手数料の2つの仕組み(上限制と届出制)
  • 上限制の手数料の計算
  • 紹介会社が公開している情報と、その確かめ方
  • 返戻金制度と、契約前に書面で確かめること
  • 紹介会社に求められているルール
  • ハローワークなどほかの経路との使い分け

採用にかかる費用全体の計算は、採用単価の計算方法で扱っています。

手数料の2つの仕組み

仕組み根拠内容
上限制職業安定法第32条の3第1項第1号、施行規則第20条・別表省令で定める種類と上限額の範囲で手数料を取る
届出制職業安定法第32条の3第1項第2号、施行規則第20条第5項手数料の種類・額などを定めた手数料表をあらかじめ厚生労働大臣に届け出て、それにもとづいて取る

届出制の手数料表は、職業紹介の役務の種類ごとに、手数料の額と負担する者がわかる方法で作ることとされています(施行規則第20条第3項)。厚生労働大臣は、届け出た手数料表が特定の者を不当に差別的に扱うものである場合や、手数料の定めが明確でないことにより著しく不当と認められる場合に、変更を命じることができます(職業安定法第32条の3第4項)。

どちらの仕組みで取っているか、届出制ならどのような手数料表かは、紹介会社から示されます。職業安定法第32条の13は、有料職業紹介事業者に、手数料に関する事項などをあらかじめ求人者と求職者に明示するよう義務づけています。

求職者からは原則として取れない

職業安定法第32条の3第2項により、有料職業紹介事業者は求職者から手数料を取ってはなりません。例外は、施行規則第20条第2項で定める芸能家・モデルの職業に紹介した場合と、一定額を超える賃金の科学技術者・経営管理者・熟練技能者の職業に紹介した場合に限られます。求人する側が知っておくべきなのは、紹介の手数料は基本的に求人する側が負担する、ということです。

上限制の手数料の計算

職業安定法施行規則の別表で、上限制の手数料の最高額は次のように定められています。

種類最高額
受付手数料求人の申込みを受理した場合、1件につき710円(免税事業者は660円)
紹介手数料(基本)支払われた賃金額の11%(免税事業者は10.3%)
紹介手数料(同じ人が6か月を超えて雇用された場合)6か月間の雇用に係る賃金の11%(免税事業者は10.3%)
紹介手数料(無期雇用で6か月を超えて雇用された場合)6か月間の賃金の11%(免税事業者は10.3%)か、そこから臨時の賃金と3か月を超える期間ごとの賃金(賞与など)を除いた額の14.8%(免税事業者は13.9%)の、いずれか大きい額

「免税事業者」は、消費税法第9条第1項本文の適用を受ける事業者のことです。

計算の手順

上限制で無期雇用の人を紹介してもらい、6か月を超えて勤めた場合の上限は、次の手順で出します。

  1. 入社から6か月間に支払われた賃金の合計(A)を出す
  2. Aから、賞与など臨時の賃金と3か月を超える期間ごとの賃金を除いた額(B)を出す
  3. A × 11% と B × 14.8% を比べ、大きいほうが上限(紹介会社が免税事業者ならそれぞれ10.3%、13.9%)

上限制は、実際に支払われた賃金にもとづいて計算するのが特徴です。

届出制の手数料

届出制では、手数料の種類や額は紹介会社ごとの手数料表で決まります。料率の設定は事業者によって違うため、契約前に手数料表そのものを受け取り、次のことを確かめます。

  • 手数料の計算の基礎(どの賃金を基に、何%か、または定額か)
  • 請求の時期(内定時か、入社時か)
  • 返戻金制度の有無と条件
  • 違約金などの定め

紹介会社が公開している情報

職業安定法第32条の16第3項と施行規則第24条の8により、有料職業紹介事業者は次の情報をインターネットで公開しなければなりません。

公開する情報内容
就職者の数紹介により就職した人の数と、そのうち無期雇用の人の数(前年度と過去の年度の総数)
6か月以内の離職者の数無期雇用で就職した人のうち、就職後6か月以内に離職した人の数(解雇などによるものを除く)
確認が取れていない人の数上記の離職にあたるかどうかがわからない人の数
手数料に関する事項取扱職種ごとの常用就職1件あたりの平均手数料率の実績を含む
返戻金制度に関する事項返戻金制度の有無と内容

「平均手数料率」は、手数料の合計額を、紹介された人がその業務で1年間に支払われる見込みの賃金額で割り、就職1件あたりの平均として出したものです(施行規則第24条の8第3項第4号)。手数料を定額で取る場合は、平均手数料額の実績で示すことができます。

人材サービス総合サイトで確かめる

これらの情報は、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で、国内すべての職業紹介事業者について確かめられます。厚生労働省のリーフレット「職業紹介事業者の上手な探し方」によると、職業安定法施行規則の改正により、令和7年4月1日以降、職種ごとの平均手数料率などの実績をこのサイトに載せることが職業紹介事業者に義務づけられています(各事業者の取扱い上位5職種に限り、常用就職の紹介実績が10件以下の場合は掲載対象外)。

リーフレットが案内している検索の手順は次のとおりです。

  1. トップページの「職業紹介事業」を選ぶ
  2. 都道府県を選ぶ(業界全体の傾向を見るなら「全国」)
  3. 「詳細検索条件」を開く
  4. 「取扱業務の職種」から職種を選ぶ
  5. 「手数料実績率・額」を選んで条件を入れる
  6. 検索する

検索結果では、事業者ごとに就職者数、6か月以内の離職者数、職種別の手数料実績率を一覧で並べ替えて比べられます。

見るときのポイント

  • 手数料率だけで選ばない: 6か月以内の離職者数が多い事業者は、定着を加えると実質の費用が高くなる
  • 職種を合わせて比べる: 平均手数料率は職種ごとに出ているので、自社が採りたい職種の数字を見る
  • 許可を確かめる: 許可番号と許可年月日もサイトで確かめられる

返戻金制度と、契約前に確かめること

返戻金制度

返戻金制度は、紹介で就職した人が早期に離職した場合などに、手数料の全部または一部を返す制度です(施行規則第24条の5第1項第2号)。指針(平成11年労働省告示第141号)は、有料職業紹介事業者は返戻金制度を設けることが望ましいとしています。制度の有無は事業者ごとに違いますが、返戻金制度に関する事項は求人者に明示しなければならないとされています。

返戻金制度で確かめること:

  • 対象になる離職の期間(入社から何か月以内か)
  • 返る割合(期間に応じて段階的に変わるか)
  • 対象外になる理由(自己都合・会社都合などの区別)
  • 申し出の期限と方法

違約金などの定め

指針は、職業紹介事業の利用に関連して求人者が負担する違約金などについて、その金額、発生する条件、解除の方法を含む契約内容を、わかりやすく明瞭かつ正確に書いた書面や電子メールなどで、あらかじめ求人者に明示するよう定めています。口頭での説明や、ホームページの該当箇所を教えるだけのように、同じ文面を読み返せない方法は、適切な明示とはいえないとされています。

契約前には、次のことを書面で受け取って確かめます。

  • 上限制か届出制か。届出制なら手数料表
  • 手数料の計算の基礎と請求の時期
  • 返戻金制度の対象期間・割合・条件
  • 違約金の金額・発生する条件・解除の方法
  • 紹介された人を別の経路で採用した場合の扱い
  • 求人者の情報と求職者の個人情報の取扱い

紹介会社に求められているルール

求人する側も、紹介会社が守るべきルールを知っておくと、契約や対応の判断に役立ちます。指針の第六は、主に次のことを定めています。

ルール内容
転職の勧奨の禁止その紹介で無期雇用として就職した人に、就職した日から2年間、転職をすすめてはならない
お祝い金などの制限求職の申込みをすすめるために、お祝い金などの名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭などを提供してはならない
返戻金制度の明示返戻金制度に関する事項を、求人者と求職者に明示しなければならない
違約金などの明示求人者が負担する違約金などの内容を、再読できる方法であらかじめ明示する

ほかの経路との使い分け

経路費用向いている場面
ハローワーク無料(職業安定法第8条)すべての募集の土台として
求人サイト・求人広告掲載や応募に応じた料金(事業者ごとに違う)応募の数を増やしたい職種
有料職業紹介採用が決まったときの手数料急ぎの採用、専門職・管理職、自社で候補者を探す時間がないとき

人材紹介は、採用が決まるまで手数料がかからない代わりに、決まったときの1人あたりの費用が大きくなりやすい経路です。ハローワークに求人を出しておき、応募が集まらない職種や、急いで採る必要のある職種に絞って使うと、費用を抑えやすくなります。ハローワークの使い方はハローワーク求人の出し方で整理しています。

まとめ

  • 人材紹介の手数料は、上限制か届出制に限られ、求職者からは原則取れない
  • 上限制の紹介手数料は、支払われた賃金の11%(無期雇用で6か月超なら14.8%の計算との大きいほう)が上限
  • 紹介会社は、就職者数、6か月以内の離職者数、職種ごとの平均手数料率、返戻金制度を公開する義務がある
  • 人材サービス総合サイトで、手数料率と定着の実績をあわせて比べる
  • 契約前に、手数料表・返戻金制度・違約金を書面で受け取って確かめる

参考資料