求人票は「法律で決まった労働条件を漏れなく書く」ことと「応募する人が入社後の姿を思い描けるくらい具体的に書く」ことの2つがそろって、はじめて応募と定着の両方につながります。前者は職業安定法とその施行規則・指針で項目が決まっており、後者はハローワークが求人を受け付ける立場から記入のポイントを公開しています。

この記事では、はじめて自社で求人票を書く中小企業向けに、次の順で整理します。

  • 求人票に必ず書く項目(職業安定法施行規則第4条の2)
  • 応募が集まる書き方(ハローワーク「応募したくなる求人へ!」の6つのポイント)
  • 賃金欄と固定残業代の書き方
  • 年齢・性別などで書けない表現
  • 載せたあとの「正確かつ最新」の義務
  • 提出前のチェックリスト

労働条件の明示のルールそのもの(明示の時期・方法・変更したときの扱い)は、募集時の労働条件の明示で詳しく扱っています。

求人票に必ず書く項目

労働者を募集する事業主は、職業安定法第5条の3により、応募する人に労働条件を明示しなければなりません。明示する項目は職業安定法施行規則第4条の2第3項で決まっています。厚生労働省のリーフレット「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」の記載例をもとに、求人票の欄と対応させると次のとおりです。

明示する項目書き方の例(厚生労働省リーフレットの記載例の形)
従事すべき業務の内容雇入れ直後の業務と、変更の範囲(例:(雇入れ直後)一般事務/(変更の範囲)●●事務)
労働契約の期間期間の定めの有無。有期なら期間、更新の有無と判断の基準、更新上限の有無
試用期間有無と期間。期間中の労働条件が違うならその内容
就業場所雇入れ直後の場所と、変更の範囲
始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩、休日就業時間、休憩時間、休日、時間外労働の有無と目安
賃金月給・日給などの形態、基本給、手当、固定残業代の内訳
加入する保険雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険
受動喫煙を防止するための措置屋内禁煙など
募集者の氏名または名称会社名
派遣労働者として雇う場合その旨

2024年4月1日施行の改正で、上の表のうち「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)」の3つが加わりました。「変更の範囲」は、雇い入れた直後だけでなく、将来の配置転換の見込みも含めた、その労働契約の期間中に変わりうる範囲のことです。

書き漏れやすい3項目

実務では、次の3つが抜けやすい項目です。

  1. 変更の範囲: 転勤や部署異動の可能性があるのに「雇入れ直後」の欄しか書いていない
  2. 試用期間中の条件: 試用期間中だけ賃金が違うのに、本採用後の額しか書いていない
  3. 受動喫煙防止措置: 欄があるのに空いている

応募が集まる書き方(ハローワークの6つのポイント)

ハローワークインターネットサービスの「応募したくなる求人へ!」は、求職者は賃金や労働時間だけでなく、仕事の内容・企業理念・教育訓練なども含めて総合的に判断している、という前提で、次の6点を挙げています。

ポイント何を書くか
1 会社の特長経営方針、教育訓練制度、職場の雰囲気、代表的な商品の評判など
2 仕事の内容職種名だけでなく、扱う製品、顧客層、担当範囲、使う機材、必要な資格・経験
3 賃金基本給・定額手当・固定残業代・その他の欄を正確に。総支給額の例、昇給・賞与の実績
4 福利厚生・研修研修制度、資格取得支援、入社1年後・3年後の将来像、試用期間中の待遇
5 魅力のアピール資格取得の支援、実力による評価、ノルマのない安定収入、未経験可、時間調整のしやすさ
6 画像会社の外観、作業風景、取扱商品など(求人者マイページから登録)

仕事の内容は「職種名だけ」にしない

ハローワークは、「仕事の内容」欄の充実度と応募状況の関係を調べると、記載が少ないと応募者が少なく、充実するにしたがって応募者が増える結果が出ていると説明しています。また、正確で詳細な記載は入社後の定着にも影響するとしています。

具体的に書くとは、次のような情報を足すことです。

  • 何を: 扱う製品やサービス、料理の種類、施設の種類
  • 誰に: 顧客層(法人・個人、新規・既存)
  • どこで: 担当する地域、施設の規模、店舗の席数
  • どうやって: 社用車の使用、使う機材やソフト
  • 1日の流れ: 未経験者向けなら、専門用語を避けて仕事の中身を思い描ける説明

看護師や調理人のように誰でも知っている職種名でも、病院か診療所か介護施設か、入院か外来か、料理の種類や店の規模によって仕事は違う、というのがハローワークの説明です。

資格と経験は「必須」と「歓迎」を分ける

同じページでは、免許・資格・技能・経験について、その職務に必要不可欠なのか、あれば望ましいのかを明確にして書くよう求めています。必須の水準を曖昧にすると誤解を招くためです。入社後に資格を取れる場合や、取得の援助制度がある場合は、その旨も書き添えます。

研修と将来像を書く

未経験者を募集する場合、研修制度や資格取得の支援は、はじめての仕事への不安を和らげる情報になるとされています。「入社後1週間の導入研修」「1年間は先輩と一緒に業務」のように、仕事の覚え方を具体的に書きます。

賃金欄と固定残業代の書き方

賃金は「平均的な実態」で書く

ハローワークの求人票の賃金欄には「基本給」「定額的に支払われる手当」「固定残業代」「その他の手当等付記事項」の欄があります。そのうえで、各種手当を含む総支給額を「求人に関する特記事項」欄に書くと、求職者が入社後の生活を思い描きやすくなるとしています。特記事項に足す例として挙げられているのは次の4つです。

  • 残業手当などの諸手当(通勤手当を除く)を含む総支給額の下限(初任給)
  • 経験者に対する下限の給与額
  • 在職している従業員の具体的な賃金の例
  • 世帯主・一人暮らしなど家庭の事情に応じて考慮する場合はその額

一方で、勤続年数がとても長い社員の基本給を上限額として表示する、過度な残業を前提に総支給額を出す、営業職で最大限の契約を取ったときの特別な額を表示する、といった書き方は、採用した人の期待を実際の賃金が下回り早期退職につながりかねないとして、平均的な実態を書くよう求めています。

これは職業安定法の指針(平成11年労働省告示第141号)の第四でも、「賃金等について、実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはならない」と定められています。

固定残業代は3点を明示する

一定時間分の時間外・休日・深夜労働の割増賃金を定額で払う仕組み(固定残業代)を採る場合、同じ指針の第三は、名称にかかわらず次の内容を明示するよう定めています。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代の計算方法(何時間分で、いくらか)
  3. その時間を超える時間外・休日・深夜労働分の割増賃金を追加で支払うこと

厚生労働省のリーフレットの記載例は、「基本給 ●●円((2)の手当を除く額)」「■■手当(時間外労働の有無に関わらず、●時間分の時間外手当として▲▲円を支給)」「×時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」という形です。月給の総額だけを大きく書き、内訳を書かないのは避けます。

昇給・賞与は実績で書く

ハローワークは、昇給と賞与の欄も実績ベースで正確に書くことで、誤解のない求人になるとしています。制度があっても直近で支給していないなら、そのとおりに書きます。

年齢・性別などで書けない表現

年齢の制限は原則として書けない

労働施策総合推進法第9条は、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう事業主に求めています。例外として年齢を条件にできるのは、同法施行規則第1条の3第1項に挙げられた場合だけです。

例外(施行規則第1条の3第1項)内容
第1号定年の年齢を下回ることを条件とする募集(期間の定めのない契約に限る)
第2号労働基準法などの法令で、特定の年齢の人の就業が禁止・制限されている業務
第3号イ長期勤続によるキャリア形成を目的に、若年者などを募集する場合(期間の定めのない契約、職業経験を問わない、新卒者と同等の処遇などの条件つき)
第3号ロ特定の職種で特定の年齢層の労働者が相当程度少ない場合に、技能・知識の継承を目的とする募集(期間の定めのない契約に限る)
第3号ハ芸術・芸能の分野で表現の真実性のために必要な場合
第3号ニ60歳以上の高年齢者、または国の施策を活用して特定の年齢層の雇用を促進する場合

さらに、高年齢者雇用安定法第20条は、やむを得ない理由で一定の年齢(65歳以下)を下回ることを条件にするときは、求職者にその理由を示さなければならないと定めています。

同じ施行規則第1条の3第2項は、年齢ではなく、職務の内容や必要な適性・能力・経験・技能の程度をできる限り明示するよう求めています。「若い人」ではなく「どんな仕事ができる人か」を書く、ということです。

性別で分ける表示は禁止

男女雇用機会均等法第5条は、募集・採用で性別にかかわりなく均等な機会を与えるよう定めています。同法の指針(平成18年厚生労働省告示第614号)は、禁止される例として次のものを挙げています。

  • 募集・採用の対象を男女のいずれかのみとすること
  • 男女のいずれかを表す職種の名称を使うこと(対象を一方に限らないことが明らかな場合を除く)
  • 「男性歓迎」「女性向きの職種」などの表示
  • 女性についてのみ、未婚であること・子がいないこと・自宅から通勤することなどを条件にすること
  • 求人の内容の説明など、情報の提供を男女で変えること

また、均等法第7条と同法施行規則第2条により、合理的な理由なく身長・体重・体力を要件にすること、転居を伴う転勤に応じられることを要件にすることは、間接差別として禁止されています。

なお、女性が相当程度少ない雇用区分で女性を有利に扱う募集(ポジティブ・アクション)は、指針で法違反にならないとされています。

応募書類で求める情報にも注意する

求人票に「家族構成がわかる書類を持参」のように、本人の適性・能力と関係のない情報を求める書き方はしません。応募書類や面接で聞いてはいけない事項は、公正な採用選考とはで整理しています。

載せたあとの「正確かつ最新」の義務

職業安定法第5条の4は、募集の情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じ(第1項)、募集する側に情報を正確かつ最新の内容に保つよう義務づけています(第2項)。指針の第四は、具体的に次のことを求めています。

場面すること
関係会社がある雇う予定の会社を明確にし、関係会社と混同されないようにする
業務委託の募集と並べる雇用の募集と請負の受注者の募集が混同されないようにする
職種・業種の名称実際の業務と著しくかけ離れた名称を使わない
募集を終えた・内容を変えた速やかに情報の提供をやめるか変更し、掲載を頼んだ求人サイトにも終了・変更を依頼する
情報を出すときその情報がいつ時点のものかを明らかにする
求人サイトから訂正を頼まれた速やかに対応する

また、職業安定法第65条第9号は、虚偽の広告や虚偽の条件を示して労働者の募集を行った者を、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処すると定めています。

提出前のチェックリスト

  • 業務内容と就業場所に「変更の範囲」を書いた
  • 有期契約なら、更新の有無・判断基準・更新上限の有無を書いた
  • 試用期間の有無と期間、期間中の条件を書いた
  • 就業時間・休憩・休日・時間外労働の有無を書いた
  • 賃金の形態・基本給・手当を分けて書いた
  • 固定残業代があるなら、除いた基本給・時間数と金額・超過分の追加支払いを書いた
  • 賃金は最高額ではなく平均的な実態で書いた
  • 昇給・賞与は実績どおりに書いた
  • 加入保険と受動喫煙防止措置を書いた
  • 仕事の内容に、何を・誰に・どこで・どうやってを書いた
  • 資格・経験を「必須」と「歓迎」に分けた
  • 年齢・性別を限る表現、「男性歓迎」「女性向き」などの表示がない
  • 職種名が実際の業務とかけ離れていない
  • 情報の時点を示し、変更・終了時の更新手順を決めた

まとめ

  • 求人票に書く労働条件は、職業安定法施行規則第4条の2で決まっている。2024年4月から「変更の範囲」と「更新の基準」が加わった
  • 応募を集めるには、仕事の内容を職種名で終わらせず、製品・顧客・地域・機材まで具体的に書く
  • 賃金は平均的な実態で書き、固定残業代は3点を明示する
  • 年齢と性別は、法律で認められた例外を除いて条件にできない
  • 掲載後も、情報を正確かつ最新に保つ義務がある

参考資料