求人に「男性のみ」「女性歓迎」「男性向きの仕事です」と書くことは、男女雇用機会均等法で原則として禁止されています。力仕事だから、接客だから、いまの職場が一方の性別ばかりだから、という理由だけでは、性別を限ることはできません。

一方で、女性を有利に扱ってよい場合や、性別を限ってよい職務も、法律と指針で決まっています。この記事では、厚生労働省の指針(平成 18 年厚生労働省告示第 614 号)に沿って、禁止の例、例外、そして性別以外の要件が問題になる「間接差別」を整理します。

決まりの中身

男女雇用機会均等法第 5 条は、事業主に、労働者の募集と採用について、性別にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています。男性にも女性にも適用され、女性だけを守る決まりではありません。

指針は、1 つの雇用管理区分(職種、資格、雇用形態、就業の形態などで分けた区分)の中で、次のような措置を禁止される例として挙げています。

男女のいずれかを対象から外す

  • 一定の職種(総合職・一般職などを含む)や雇用形態(正社員・パートタイムなどを含む)で、募集や採用の対象を男女のいずれかのみとする
  • 男女のいずれかを表す職種の名称を使う(対象を男女のいずれかに限らないことが明らかな場合を除く)
  • 「男性歓迎」「女性向きの職種」などの表示をする
  • 男女とも募集の対象にしているのに、応募の受付や採用の対象を男女のいずれかのみとする

条件や選考の仕方を男女で変える

  • 女性についてだけ、未婚であること、子がいないこと、自宅から通勤することなどを条件にする
  • 筆記試験や面接の合格基準を男女で変える、男女で違う試験をする
  • 面接で、結婚の予定や、子が生まれたら働き続けたいかなどを、女性にだけ聞く

男女のいずれかを優先する

  • 採用の基準を満たす人の中から、男女のいずれかを優先して採用する
  • 男女別の採用予定人数を決めて示す、またはその人数どおりに採用する
  • 男女のいずれかについて、採用する最低の人数を決めて募集する
  • 男性の選考を終えてから女性を選考する

情報の提供を男女で変える

  • 会社の資料を送る相手を男女のいずれかのみにする、資料の中身や送る時期を男女で変える
  • 説明会の対象を男女のいずれかのみにする、開く時期を男女で変える

求人票でよくある書き方

実務で気をつけたいのは、次のような書き方です。

書き方考え方
「男性スタッフ募集」「女性限定」対象を男女のいずれかのみとしている
「男性向きの力仕事です」「女性が活躍できる職場」だけを強調「男性歓迎」「女性向きの職種」と同じく、一方を歓迎する表示と受け取られるおそれがある
「〇〇マン」「〇〇レディ」など一方を表す職種名男女とも対象であることを明らかにしないと禁止の例にあたる
「男性 2 名・女性 1 名募集」男女別の採用予定人数を示している

仕事の中身を伝えたいなら、性別ではなく、運ぶ荷物の重さ、立ち仕事の時間、使う機械、勤務時間帯など、仕事そのものを具体的に書きます。

例外 1:女性を有利に扱うポジティブ・アクション

指針は、女性が男性と比べて相当程度少ない雇用管理区分や役職の募集・採用で、女性に有利な取扱いをすることは、法違反にならないとしています。女性に向けて多く情報を出すこと、採用の基準を満たす人の中から女性を優先して採用することなどがこれにあたります。

厚生労働省の施行通達では、「相当程度少ない」とは、女性の割合が 4 割を下回っている状態をいうとされています。判断は会社全体ではなく、募集する雇用管理区分や役職ごとに行います。

これは、男女の均等な機会を妨げている事情を改めるための措置として認められているものです。指針が認めているのは女性に有利な取扱いで、男性が少ない区分で男性を優先することは、この例外に入りません。

例外 2:性別を限ってよい職務・場合

指針は、次の場合には、性別を限った募集や採用をしても法違反にならないとしています。

区分内容
芸術・芸能表現の真実性などの要請から、男女のいずれかのみに従事させる必要がある職務(役を演じる俳優など)
防犯守衛・警備員などのうち、防犯上の要請から男性に従事させる必要がある職務
同程度の必要性宗教上、風紀上、スポーツの競技の性質上など、業務の性質上、上の 2 つと同じ程度に男女のいずれかに限る必要がある職務
法令による制限労働基準法で女性を就かせられない業務(坑内労働や危険有害業務の一部)、保健師助産師看護師法で男性が就けない業務(助産師)のため、通常の業務を回すのに均等な扱いが難しい場合
海外勤務など風俗・風習などの違いで男女のいずれかが能力を発揮しにくい海外での勤務が必要な場合、その他特別の事情がある場合

「力仕事だから」「お客様が女性だから」「いまの職場が男性ばかりだから」は、この表のどれにもあたりません。例外にあたるかの判断に迷う場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確かめます。

性別以外の要件でも問題になる「間接差別」

性別を書いていなくても、一方の性に大きく不利になる要件を、合理的な理由なく課すことは、間接差別として禁止されています(均等法第 7 条、同法施行規則第 2 条)。募集・採用に関わるのは、次の 2 つです。

身長・体重・体力の要件

募集や採用で、身長や体重が一定以上(または以下)であることや、一定以上の筋力・運動能力があることを選考の基準にする場合です。指針は、合理的な理由がない例として次を挙げています。

  • 荷物を運ぶ仕事で、その仕事に必要な筋力より強い筋力を求める
  • 荷物を運ぶ仕事でも、設備や機械があって通常は筋力が要らないのに、一定以上の筋力を求める
  • 受付や出入りのチェックだけをするなど、防犯を本来の目的としない警備員の職務で、身長や体重が一定以上であることを求める

「体力に自信のある方」と書きたいときは、何キロの荷物を、1 日に何回、どのくらいの距離運ぶのかを書くほうが、応募する人にとっても判断しやすくなります。

転居を伴う転勤の要件

募集や採用で、転居を伴う転勤に応じられることを要件にする場合です。指針は、合理的な理由がない例として次を挙げています。

  • 広い地域に支店などがなく、広げる計画もない
  • 支店などはあるが、長い間、本人の希望を除いて転居を伴う転勤がほとんどない
  • 別の地域での勤務経験を積むことが能力の育成に特に必要とは言えず、転勤を含む人事ローテーションも組織の運営上特に必要とは言えない

実際には転勤がほとんどないのに、求人票に「転勤可能な方」と書いたままになっていないかを確かめます。

違反したときの扱い

均等法の違反があると、都道府県労働局長による報告の求めや、助言・指導・勧告の対象になります。厚生労働大臣の勧告に従わない場合は、企業名が公表されることがあります。また、報告を求められて報告しなかったり、虚偽の報告をしたりした場合は、20 万円以下の過料の対象です。

求人を出す前の点検表

  • 対象を男女のいずれかに限る書き方になっていない
  • 「男性歓迎」「女性向き」など、一方を歓迎する表示がない
  • 一方の性を表す職種名を使うなら、男女とも対象であることを明記している
  • 男女別の採用予定人数を書いていない
  • 身長・体重・体力を要件にするなら、仕事に照らして本当に必要な水準か
  • 転居を伴う転勤を要件にするなら、実際に転勤があり、必要性を説明できるか
  • 女性を優先する募集なら、その区分で女性が 4 割を下回っていることを確かめた
  • 求人票・採用ページ・求人媒体・SNS のすべてで表示がそろっている

まとめ

  • 男女雇用機会均等法第 5 条により、募集・採用で性別を限ることは原則として禁止。男女どちらにも適用される
  • 対象を一方に限る、「男性歓迎」「女性向き」と書く、男女別の人数を示す、女性にだけ結婚の予定を聞く、などが禁止の例
  • 女性が 4 割を下回る区分で女性を有利に扱うポジティブ・アクションは法違反にならない
  • 芸術・芸能、防犯、法令による就業制限などの場合は、性別を限ってよい
  • 身長・体重・体力や、転居を伴う転勤を要件にすることは、合理的な理由がなければ間接差別になる

参考資料