求職者は、求人票の給与や休日だけでなく、残業時間、有給休暇の取得、離職の状況、育児休業の取得といった職場の数字を見て応募先を選びます。こうした数字には、法律で公表や提供が決まっているものと、会社が任意で出すものがあります。

この記事では、会社の規模ごとに求められる職場情報の公開と、その出し方を、条文と厚生労働省の資料にもとづいて整理します。

会社の規模と、求められる公開

まず、法律で決まっている主なものを並べます。

制度対象内容
青少年雇用情報(若者雇用促進法)新卒者等を募集・求人する会社(規模を問わない)求めがあれば提供する義務。自分から提供するのは努力義務
中途採用比率(労働施策総合推進法)常時雇用する労働者が 301 人以上直近 3 事業年度の比率を、おおむね年 1 回公表
男女間賃金差異・女性管理職比率(女性活躍推進法)101 人以上(2026 年 4 月 1 日から)公表の義務。ほかの項目もあわせて公表
男性の育児休業取得率等(育児・介護休業法)300 人超(2025 年 4 月 1 日から。それまでは 1,000 人超)年 1 回公表

100 人以下の会社には、青少年雇用情報のほかは公表の義務がないか、努力義務にとどまります。ただ、求職者にとっては、公表の義務があるかどうかに関係なく、数字があるかないかが判断材料になります。

青少年雇用情報

若者雇用促進法第 13 条は、新卒者など学校卒業見込者等を対象にした募集を行う会社に、青少年雇用情報を提供するよう努めることを求めています。そのうえで、応募者や応募しようとする人から求めがあったときは、提供しなければなりません。ハローワークや職業紹介事業者に新卒向けの求人を申し込むときも同じです(第 14 条)。

3 つの類型

青少年雇用情報は、次の 3 つの類型に分かれています。

類型主な項目
募集・採用に関する状況直近 3 事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数、平均継続勤務年数
職業能力の開発・向上に関する取組の実施状況研修の有無と内容、自己啓発支援の有無と内容、メンター制度の有無、キャリアコンサルティング制度の有無と内容、社内検定等の制度の有無と内容
職場への定着の促進に関する取組の実施状況前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得者数と出産者数(男女別)、役員と管理的地位にある者に占める女性の割合

求めがあったときは、3 つの類型それぞれで 1 項目以上を提供する必要があります。厚生労働省は、義務の範囲にとどまらず、できるだけすべての項目を示すよう求めています。

数字の出し方

厚生労働省の「青少年雇用情報シート」の書き方では、次のように計算します。

  • 月平均所定外労働時間:前事業年度の所定外労働時間の合計を、各月 1 日に在籍している労働者の延べ人数で割る
  • 有給休暇の平均取得日数:前事業年度の労働者ごとの取得日数の合計を、労働者数で割る(管理的地位にある人や、有給休暇が付与されていない人は除いてよい)
  • 平均継続勤務年数:労働者ごとの勤続年数の合計を、労働者数で割る

正社員と正社員以外は分けて示します。ハローワークの新卒向けの求人申込書には、青少年雇用情報の欄が設けられています。

中途採用比率

労働施策総合推進法第 27 条の 2 は、常時雇用する労働者が 301 人以上の会社に、採用した正規雇用労働者に占める中途採用者の割合を定期的に公表することを求めています(2021 年 4 月 1 日施行)。

  • 直近の 3 事業年度の各年度の比率を示す
  • 比率は「中途採用者数 ÷ 正規雇用労働者の採用数 × 100」で出し、小数点以下第一位を四捨五入する
  • おおむね年 1 回、公表した日を明らかにして、インターネットなど求職者が容易に見られる方法で公表する

中途採用比率は、経験者を採用して受け入れている会社かどうかを示す数字です。301 人未満の会社でも、中途採用を中心にしているなら、自主的に出すと求職者に伝わりやすくなります。

女性活躍推進法と育児・介護休業法の公表

女性活躍推進法

女性活躍推進法の改正(2026 年 4 月 1 日施行)で、常時雇用する労働者が 101 人以上の会社は、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が必須になりました。301 人以上の会社はこれに加えて 2 項目以上、101〜300 人の会社は 1 項目以上をあわせて公表します。

育児・介護休業法

男性の育児休業等の取得状況の年 1 回の公表は、2025 年 4 月 1 日から、常時雇用する労働者が 300 人を超える会社に義務付けられています(それまでは 1,000 人超)。厚生労働省は、公表先として「両立支援のひろば」を勧めています。

しょくばらぼに載せる

厚生労働省の「しょくばらぼ」(職場情報総合サイト)は、勤務実態などの働き方や採用状況に関する企業の職場情報を、検索・比較できるサイトです。えるぼし・くるみんなどの認定を受けた企業の情報のほか、企業が自ら入力した独自の情報も載ります。

自社のホームページに採用ページがない、または更新が止まりがちな会社にとっては、公的なサイトに数字を載せておく手段になります。

公開するときの注意

期間と対象を書く

数字には、必ずいつの期間の、誰を対象にした数字かを添えます。「残業月 10 時間」とだけ書くと、正社員の数字なのか、全社の平均なのか、繁忙期を含むのかが分かりません。

良く見せるために計算を変えない

求人の表示には、職業安定法で虚偽の表示や誤解を生じさせる表示の禁止がかかっています。一部の部署だけの数字を全社の数字のように見せる、例年と違う計算の仕方で低く見せる、といった出し方は避けます。

数字と取組をセットにする

数字が平均より悪く見える場合も、改善のために何をしているかを並べて書けば、求職者には判断材料になります。たとえば残業が多い部署があるなら、その部署と、減らすための取組を具体的に書きます。

毎年更新する

一度出した数字は、事業年度ごとに更新します。古い数字が残っていると、求職者は今の職場の姿として読みます。公表した日を書いておくと、いつの情報かが伝わります。

公開する前の点検表

  • 新卒を募集するなら、青少年雇用情報の 3 類型すべてを用意した
  • 301 人以上なら、直近 3 事業年度の中途採用比率を公表した日とともに出している
  • 101 人以上なら、男女間賃金差異と女性管理職比率を公表している
  • 300 人超なら、男性の育児休業取得率等を年 1 回公表している
  • どの数字にも、期間・対象・計算の仕方を書いた
  • 採用ページ、求人票、しょくばらぼなどで、数字がそろっている
  • 事業年度が変わったら更新する担当と時期を決めた

まとめ

  • 新卒を募集する会社は、規模にかかわらず、求めがあれば青少年雇用情報を 3 類型それぞれ 1 項目以上提供する義務がある
  • 301 人以上は中途採用比率、101 人以上は男女間賃金差異と女性管理職比率、300 人超は男性の育児休業取得率等を公表する
  • しょくばらぼには、企業が自ら職場情報を入力して載せられる
  • 数字には期間と対象を添え、計算の仕方を変えて良く見せない。取組とセットで出し、毎年更新する

参考資料