SNSで採用を始めるときに最初に押さえることは、募集を告知する投稿は、職業安定法上の「広告等による募集情報の提供」にあたるという点です。投稿には、募集主の氏名(名称)・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金の6情報を、投稿そのものに書く必要があり、採用サイトへのリンクを貼るだけでは足りないと厚生労働省は示しています。そのうえで、虚偽や誤解を招く表示をしないこと、募集を終えたら速やかに投稿の内容を改めることが求められます。

一方で、SNSの強みは、求人票の欄に収まらない「仕事の中身」や「職場の実際」を伝えられることです。この記事では、次のことを整理します。

  • SNS採用を始める前に決めること
  • 発信する内容の決め方
  • 求人を投稿するときの法律のルール(6情報、的確表示、正確かつ最新)
  • 労働条件はどこまで、いつまでに示すか
  • DMでのやり取りと個人情報
  • よくある落とし穴と、始める前のチェックリスト

ハローワークや学校経由の採用と組み合わせる場合は、ハローワーク求人の出し方と高卒求人の出し方もあわせて確かめてください。

SNS採用を始める前に決めること

SNSでの採用の発信は、大きく2種類に分かれます。

種類目的法律の扱い
職場の発信会社や仕事を知ってもらう。応募の前段階で候補に入れてもらう募集の告知を含まなければ、6情報の記載は求められない
募集の告知「スタッフ募集」「一緒に働く仲間を募集」など、応募を呼びかける職業安定法の募集情報として、6情報の記載や的確表示のルールがかかる

どちらの投稿なのかを、投稿する前に決めておくのが最初の一歩です。「職場の雰囲気の投稿の最後に『興味のある人はDMで』と一言添える」と、その投稿は募集の告知になります。

あわせて、次の3点を決めておきます。

  1. 誰に向けて発信するか: 採用計画の立て方で決めた職種と人物像をもとに、見てほしい人を1つに絞る。職種ごとに見てほしい人が違えば、投稿の内容も変わる
  2. 誰が、どれくらいの頻度で投稿するか: 担当者と、投稿前に内容を確かめる人(労働条件の数字が合っているかなど)を分ける
  3. 応募をどこで受けるか: SNSは入口にとどめ、応募は採用サイトの応募フォーム、ハローワーク、求人サイトなどに誘導するのか、SNSからの直接の連絡も受けるのかを決める

発信する内容の決め方

発信の内容は、応募を考える人が求人票だけでは分からないことを事実にもとづいて伝えるのが基本です。次のような題材があります。

題材伝わること書き方の注意
仕事の具体的な中身求人票の「業務内容」の1行では伝わらない作業の流れ専門用語を避け、1つの作業を最初から最後まで見せる
1日・1週間の流れ出勤から退勤まで、忙しい時間帯、休憩の取り方実際の勤務時間・シフトと食い違わないようにする
一緒に働く人上司や先輩の人柄、年齢層、職場の人数写真や名前を出す社員には、事前に了解を取る
入社後の教え方最初の数か月に誰が何を教えるか研修制度がなくても、実際の段取りを書ける
残業・休暇・休みの取り方求人票の数字の裏側数字は就業規則や勤怠の実績と一致させる
選考の流れ応募から内定までの回数・期間・服装など変わったら古い投稿も直す

材料に困ったら、若者雇用促進法で新卒者に提供することが定められている職場情報の項目(厚生労働省「職場情報の提供制度」)が一覧として使えます。採用・離職の状況、平均勤続年数、研修の有無と内容、メンター制度、月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得状況などです。中途採用でも、応募を考える人が知りたい内容はほぼ同じです。

ハローワークも、事業所の外観や職場風景の画像、事業所からのメッセージを求人と一緒に公開する「PR情報」の仕組みを用意しています。SNS用に撮った写真や文章は、ハローワークのPR情報や自社の採用サイトにも使い回せます。

誇大な表現は使わない

指針(平成11年労働省告示第141号)は、募集情報を広告等で出すときに誤解を生じさせないよう、次の点に留意するよう求めています。

  • 関係会社がある場合、雇用する予定の会社を明確にし、関係会社と混同されないように表示する
  • 労働者の募集と、請負契約で仕事を受ける人の募集が混同されないように表示する
  • 賃金等(賃金形態、基本給、定額の手当、通勤手当、昇給、固定残業代など)を、実際よりも高額であるかのように表示しない
  • 職種や業種に、実際の業務の内容と大きくかけ離れた名称を使わない

厚生労働省と都道府県労働局のリーフレット「SNS等を通じて直接労働者を募集する際には」は、募集主の氏名などが無く、「アットホームな職場」「高待遇」「負担なくラクに稼げる」「興味のある人はDMで」といった言葉だけが並ぶ募集の投稿を、誤解を生じさせるため認められない例として示しています。雰囲気を伝える言葉を使うなら、その根拠になる事実(休みの取り方、残業の実績など)を一緒に書きます。

求人を投稿するときの法律のルール

虚偽・誤解を招く表示の禁止と、6情報

職業安定法第5条の4第1項は、労働者の募集を行う者が、広告等により募集に関する情報を提供するときは、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています。ここでいう「広告等」には、職業安定法施行規則第4条の3で、電子計算機と電気通信回線を接続してする方法なども含まれ、厚生労働省はインターネットやX等のSNSによる募集も対象になると案内しています。

そのうえで厚生労働省は、いわゆる「闇バイト」の募集への対策の一つとして、令和6年12月から、広告等で募集情報を提供するときは次の6情報の記載が必要であることを明確にしています(厚生労働省「職業安定法に基づく周知|労働者の募集広告の表示について」、上記のリーフレット、厚生労働省「求人メディア等を悪用して行われる『闇バイト募集』の防止・排除」の資料)。

6情報書き方(リーフレットのQ&Aより)
① 氏名(名称)会社名や屋号
② 住所(所在地)ビル名、階数、部屋番号まで
③ 連絡先電話番号、メールアドレス、自社ウェブサイト上の専用の問い合わせフォームへのリンクのいずれか。SNSのメッセージ機能だけでは足りない
④ 業務内容見た人が誤解しない程度に具体的に
⑤ 就業場所雇入れ直後の就業場所だけを示す形や、複数の候補を示して「応相談」とする形でもよい
⑥ 賃金「時給1500円〜」のような形でもよい

リーフレットのQ&Aは、6情報を書かずに、6情報が載った会社サイトの募集要項へのリンクだけを載せる方法について、リンクだけではそもそも求人かどうかも含めて誤解を招くおそれがあるため、広告等そのものに6情報を書く必要があるとしています。④〜⑥は、求人票と同じ詳しさまでは求められていませんが、見た人が誤解しない程度には書きます。

なお、求人サイトなどの雇用仲介事業者を通じて募集する場合は、求職者から問い合わせがあれば仲介事業者が募集主の名称などを答える仕組みがあるため、名称などは必ずしも載せなくてよいとされています(掲載の要否は各事業者に確認)。自社のSNSアカウントから直接募集する場合は、この扱いにはあたりません。

虚偽の広告をして労働者の募集を行った場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(職業安定法第65条第9号)。

募集情報は「正確かつ最新」に保つ

職業安定法第5条の4第2項は、募集を行う者に、広告等で提供する募集情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています。指針は、具体的に次の対応を求めています。

  • 募集を終えた、または内容を変えたときは、情報の提供を速やかに終える、または内容を速やかに変える。求人サイトなどに掲載を頼んでいる場合は、その事業者にも終了・変更を依頼する
  • 募集情報を出すときは、その情報の時点を明らかにする
  • 求人サイトなどの事業者から訂正や変更を頼まれたら、速やかに対応する

SNSでは、過去の投稿が検索や再投稿でいつまでも読まれます。募集の投稿には「2026年9月時点の募集です」のように時点を書き、募集を終えたら投稿を削除するか、「募集は終了しました」と追記する運用を決めておきます。

労働条件はどこまで、いつまでに示すか

6情報は、募集の投稿に最低限必要な情報です。これとは別に、職業安定法第5条の3は、募集に応じて労働者になろうとする人に、業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件を明示することを求めています。明示する項目は施行規則第4条の2第3項に並んでおり、2024年4月からは業務と就業場所の「変更の範囲」なども加わっています。項目の一覧は募集時の労働条件の明示にまとめています。

指針は、明示の時期と、広告で書ききれない場合の扱いを次のように定めています。

  • 原則として、求職者等と最初に接触する時点までに、業務の内容等を明示する
  • 一部をやむを得ず別途明示するときは、その旨を併せて明示する
  • 広告等で募集情報を出すときは、施行規則第4条の2第3項の事項などを、可能な限りその情報に含めることが望ましい

SNSの投稿は字数や画像の枠が限られるため、全項目を1つの投稿に入れるのは現実的でないことが多いはずです。その場合は、投稿に6情報と「詳しい労働条件は募集要項(リンク先)に掲載」と書き、リンク先の募集要項で全項目を示します。面接などで応募者と最初に接触するまでに、全項目がそろっている状態にしておきます。

DMでのやり取りと個人情報

労働条件をDMで送るときの条件

労働条件の明示は、書面の交付が原則です。施行規則第4条の2は、明示を受ける人が希望した場合に限り、ファクシミリや「電子メール等」(受信する人を特定して情報を伝える電気通信)で送ってもよいとし、電子メール等の場合は、受け取った人が記録を出力して書面を作成できるものに限っています。

SNSのDMで労働条件を伝えるなら、応募者が希望していることを確かめたうえで、印刷できる形(PDFの添付など)で送るのが無難です。明示した内容の記録は、募集が終わる日(その後に契約を結ぶ人がいれば契約を結ぶ日)まで保存する必要があります(施行規則第4条の2第7項)。

個人情報は目的を示して、必要な範囲で

職業安定法第5条の5と指針は、応募者の個人情報について次のように定めています。

  • 何の目的で集め、保管し、使うのかを、応募者が想定できる程度に具体的に示す
  • 業務の目的の達成に必要な範囲で集める。人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況は、原則として集めない
  • 本人から直接集める、本人の同意のもとで本人以外から集める、本人が公開している情報を集めるなど、適法かつ公正な手段による

SNSでは、応募者のプロフィールや過去の投稿から、宗教や支持政党、家族のことなど、選考に関係のない事柄が見えてしまうことがあります。こうした情報を選考の材料にしないこと、選考のために応募者のアカウントを調べて記録するといった運用をしないことを、担当者の間で決めておきます。面接で尋ねると就職差別につながるおそれがある事項は、公正な採用選考とはで確かめられます。

社員が個人アカウントで募集を紹介するとき

社員が自分のアカウントで「うちの会社で募集しています」と投稿する場合も、会社の募集に関する情報です。6情報を書くこと、内容を正確かつ最新に保つことは変わりません。

また、職業安定法第40条は、募集を行う者が、募集に従事する自社の社員に対して、賃金・給料その他これらに準ずるもの以外の報酬を与えることを禁じています。紹介してくれた社員にお礼を出す制度を作るなら、支給の条件を就業規則などに定めて賃金として支払う形にし、扱いに迷う点は管轄の労働局に確認します。

よくある落とし穴

落とし穴起きること対策
投稿に「詳しくはプロフィールのリンクから」とだけ書く6情報が投稿に無く、誤解を招く表示になる投稿そのものに6情報を書く
連絡先を「DMで」だけにする連絡先として足りない電話番号、メールアドレス、自社サイトの問い合わせフォームのいずれかを書く
募集を終えた投稿を放置する最新の内容に保つ義務に反し、終わった募集への応募が続く時点を書き、終了したら削除か追記
賃金を「月収30万円以上可」など上限寄りに書く実際より高額であるかのような表示になりうる基本給と手当、固定残業代の有無を分けて書く
応募者の過去の投稿を選考の材料にする選考と関係のない個人情報を集めることになる選考は応募書類と面接で行う
担当者が1人で投稿を続ける条件の誤りに気づけない。担当者の異動で止まる投稿前の確認者と、投稿の保管場所を決める

始める前のチェックリスト

  • 見てほしい職種と人物像を1つに決めた
  • 投稿する担当者と、投稿前に内容を確かめる人を決めた
  • 「職場の発信」と「募集の告知」を投稿ごとに区別する運用にした
  • 募集の投稿のひな形に、6情報(名称、住所は部屋番号まで、連絡先、業務内容、就業場所、賃金)と情報の時点を入れた
  • 全項目の労働条件を載せた募集要項のページを用意し、投稿からリンクした
  • 賃金や手当、固定残業代の書き方が、求人票・就業規則と一致していることを確かめた
  • 募集を終えたときに投稿を削除または追記する手順を決めた
  • 応募をどこで受けるか(応募フォーム、ハローワーク、求人サイト、SNS)を決めた
  • DMで労働条件を送る場合の方法(本人の希望の確認、印刷できる形式)と記録の保存を決めた
  • 写真や名前を出す社員の了解を取った
  • 応募者のSNSを選考の材料にしないことを担当者で確認した

まとめ

  • 募集を告知するSNSの投稿は職業安定法の「広告等」にあたり、虚偽や誤解を招く表示は禁止されている
  • 投稿そのものに、氏名(名称)・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金の6情報を書く。リンクやDMだけでは足りない
  • 募集情報は正確かつ最新に保つ。情報の時点を書き、募集を終えたら速やかに削除か変更をする
  • 法令で明示が必要な労働条件は、原則として応募者と最初に接触する時点までにすべて示す。DMで送るのは本人の希望があり、印刷できる形に限る
  • 発信の中身は、仕事の中身・1日の流れ・教え方・休みの取り方など、求人票では伝わらない事実にする

参考資料