採用広報とは、求人票の項目だけでは伝わらない、仕事の中身や職場の実際を、自社の情報として発信する活動です。何から手をつければよいか迷う場合は、「誰に、何を、どこで伝えるか」を決めることから始めます。結論から言うと、発信する内容は求人票に書ききれない事実(仕事の流れ・職場の人・入社後の教え方など)に絞り、発信する場所は自社サイトやSNS、ハローワーク、求人検索サイトなど複数を使い分けるのが基本です。応募を呼びかける発信には、職業安定法にもとづく表示のルールもかかります。
この記事では、次のことを整理します。
- 採用広報の目的
- 会社の情報をどこで伝えるか(チャネルの使い分け)
- 発信する内容の決め方
- 発信するときに守るルール
- 始め方の手順と、よくある落とし穴
採用広報とは何をすることか
採用広報は、求人票に書く「業務内容」「賃金」「就業場所」などの項目とは別に、応募を考える人が知りたい情報を、会社の側から発信する活動です。中小企業は、知名度の面で大手企業と同じ土俵に立ちにくいため、求人票を出すだけでなく、会社の情報を自分たちで発信する必要があります。
発信の対象になる情報の例は、次のとおりです。
| 発信する内容 | 求人票で伝わらないこと |
|---|---|
| 仕事の具体的な中身 | 「営業」「事務」といった一言では伝わらない、1つの作業の流れ |
| 1日・1週間の流れ | 出勤から退勤までの時間の使い方、忙しい時間帯 |
| 一緒に働く人 | 上司や先輩の人柄、職場の人数、年齢層 |
| 入社後の教え方 | 最初の数か月に誰が何を教えるか |
| 選考の流れ | 応募から内定までの回数・期間 |
材料に迷ったときは、若者雇用促進法にもとづく「職場情報の提供制度」で新卒者への提供が定められている項目(募集・採用の状況、研修などの職業能力開発の取組、所定外労働時間や有給休暇の取得状況などの職場定着の取組)が一覧として使えます(厚生労働省「職場情報の提供制度」)。中途採用でも、応募を考える人が知りたい内容はおおむね同じです。
会社の情報をどこで伝えるか
会社の情報を伝える場所は、性質の違う複数のチャネルに分かれます。どれか1つに絞るのではなく、目的に応じて使い分けます。
| チャネル | 向いている内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自社の採用ページ・採用サイト | 全項目の労働条件、会社の詳しい情報 | 募集要項は法令で明示が必要な項目をすべて載せる |
| SNS | 職場の雰囲気、仕事の中身、日々の発信 | 募集を呼びかける投稿は職業安定法上のルールがかかる。詳しくはSNS採用の始め方 |
| ハローワーク | 求人票そのものと、事業所の外観や職場風景などのPR情報 | 求人票の出し方はハローワーク求人の出し方 |
| 求人検索サイト・求人媒体 | 求人票の内容を、検索してくる求職者に届ける | 依頼していなくても情報が転載される場合がある。詳しくは求人検索サイトへの掲載の仕組みと注意点 |
高校生を採用する場合は、応募の受付を学校を通じて行う仕組みのため、自社サイトやSNSでの発信も高卒求人の出し方のルールに沿わせる必要があります。
発信する場所を決める順番
- 全項目の労働条件を載せる場所を1つ決める: 自社の採用ページ、または募集要項のページ。SNSや求人検索サイトからは、ここにリンクする形にする
- 求職者が最初に目にする場所を決める: ハローワークや求人検索サイトなど、検索して届く場所
- 職場の実際を伝える場所を決める: SNSなど、更新を続けやすい場所
発信するときに守るルール
応募を呼びかける発信は、職業安定法上の「広告等による募集情報の提供」にあたります。同法第5条の4は、募集に関する情報を提供する者に、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしないこと、提供する情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています(厚生労働省「職業安定法に基づく周知|労働者の募集広告の表示について」)。
応募を呼びかける投稿やページには、少なくとも次の6つの情報を書く必要があります。
| 6情報 | 内容 |
|---|---|
| ① 氏名(名称) | 会社名や屋号 |
| ② 住所(所在地) | ビル名、階数、部屋番号まで |
| ③ 連絡先 | 電話番号、メールアドレス、自社サイトの問い合わせフォームのいずれか |
| ④ 業務内容 | 見た人が誤解しない程度に具体的に |
| ⑤ 就業場所 | 雇入れ直後の就業場所 |
| ⑥ 賃金 | 「時給1500円〜」のような形でもよい |
6情報の書き方と、投稿へのリンクだけでは足りない理由は、SNS採用の始め方で詳しく扱っています。これとは別に、応募者と最初に接触する時点までに、業務内容や労働時間などの労働条件をすべて明示する義務があります。明示すべき項目は募集時の労働条件の明示にまとめています。
始め方の手順
- 誰に向けて発信するかを決める: 募集する職種ごとに、見てほしい人物像を1つに絞る
- 伝える内容を選ぶ: 求人票に書ききれない事実(仕事の中身、職場の実際、教え方など)から選ぶ
- 発信する場所を決める: 全項目の労働条件を載せる場所を1つ決め、SNSや求人検索サイトなど他の場所からはそこにリンクする
- 担当と確認の体制を作る: 発信する担当者と、投稿前に労働条件の数字を確かめる担当者を分ける
- 更新を続ける: 募集を終えたら投稿や掲載を速やかに終える。内容を変えたら、載せているすべての場所を直す
よくある落とし穴
| 落とし穴 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 発信する場所を増やすことだけを目的にする | 内容が薄く、更新も続かない | 全項目を載せる場所を1つ決め、他の場所はそこへの入口にする |
| 会社の雰囲気を伝える言葉だけを並べる | 誤解を招く表示になりうる | 「アットホーム」などの言葉を使うなら、根拠になる事実(休みの取り方など)を一緒に書く |
| 募集を終えた発信を放置する | 情報を正確かつ最新に保つ義務に反し、終わった募集への問い合わせが続く | 募集を終えたら、載せているすべての場所で速やかに削除・変更する |
| 複数の場所で労働条件の数字が食い違う | 応募者との認識のずれにつながる | 賃金や勤務時間の数字を、就業規則や求人票と一致させてから発信する |
まとめ
- 採用広報は、求人票では伝わらない仕事の中身や職場の実際を発信する活動。全項目の労働条件を載せる場所を1つ決め、他の場所はそこへの入口にする
- 発信する場所は、自社サイト・SNS・ハローワーク・求人検索サイトなど性質の違うものを使い分ける
- 応募を呼びかける発信は職業安定法上のルールがかかる。氏名・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金の6情報を書き、内容を正確かつ最新に保つ
- 始め方の順番は、誰に向けるかを決める→伝える内容を選ぶ→発信する場所を決める→体制を作る→更新を続ける