契約社員やパート・アルバイトを、期間を決めて雇う「有期雇用」で採用するときは、契約期間の長さ、更新するかどうか、更新に上限があるかを、募集の段階から示す必要があります。2024 年 4 月には、契約の締結と更新のときに明示する事項が増えました。
この記事では、有期雇用で採用するときに押さえる決まりを、条文と厚生労働省の資料にもとづいて整理します。
契約期間の上限
労働基準法第 14 条は、期間の定めのある労働契約の 1 回の期間に上限を設けています。
| 区分 | 1 回の契約期間の上限 |
|---|---|
| 原則 | 3 年 |
| 高度の専門的知識等を持つ人を、その知識等を必要とする業務に就かせる場合 | 5 年 |
| 満 60 歳以上の人との契約 | 5 年 |
| 一定の事業の完了に必要な期間を定める場合 | その期間 |
この上限は 1 回の契約の長さの決まりで、更新を重ねた合計の長さの決まりではありません。合計の長さについては、あとで触れる無期転換ルールが関わります。
また、労働契約法第 17 条第 2 項は、使用者に、契約の目的に照らして必要以上に短い期間を定めて、その契約を繰り返し更新することのないよう配慮することを求めています。
募集の段階で示すこと
求人票や募集要項で示す労働条件は、職業安定法施行規則第 4 条の 2 に定められています。有期雇用の募集では、次の項目が関わります。
- 契約期間(期間の定めがあるか、あればその期間)
- 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)
更新上限は、2024 年 4 月 1 日から募集時の明示事項に加わりました。募集時の明示事項の全体は「募集時の労働条件の明示」の記事にまとめています。
求人票の書き方の例
有期雇用の求人では、たとえば次のように書きます。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 契約期間 | 期間の定めあり(1 年) |
| 更新の有無 | 更新する場合があり得る |
| 更新の判断の基準 | 契約期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況により判断 |
| 更新上限 | 通算契約期間 4 年まで(上限を設けないなら「なし」) |
判断の基準は、厚生労働省のモデル労働条件通知書に並んでいる項目(契約期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況)から、実際に使うものを選ぶと書きやすくなります。
契約するときに示すこと
採用が決まって労働契約を結ぶときは、労働基準法第 15 条と同法施行規則第 5 条にもとづいて、労働条件を書面などで明示します。有期雇用の場合、契約期間に加えて、更新する場合の基準を書面で明示する必要があります。
2024 年 4 月に加わった事項
2024 年 4 月 1 日から、労働条件の明示事項が次のように増えました。
| 明示するとき | 加わった事項 |
|---|---|
| すべての労働契約の締結時と、有期労働契約の更新時 | 就業場所と業務の変更の範囲 |
| 有期労働契約の締結時と更新時 | 更新上限の有無と内容(通算契約期間または更新回数の上限) |
| 無期転換申込権が発生する契約の更新時 | 無期転換を申し込めることと、無期転換後の労働条件 |
厚生労働省のモデル労働条件通知書(有期雇用型)では、「契約期間」の欄に、更新の有無、判断の基準、更新上限の有無(更新 何回まで/通算契約期間 何年まで)を書く形になっています。
パート・有期雇用労働法で加わる事項
有期雇用の人を雇い入れたときは、パート・有期雇用労働法第 6 条にもとづいて、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口も文書などで明示します。モデル労働条件通知書は、労働基準法の明示とこの文書の交付を 1 枚で兼ねる形になっています。
あわせて、同法第 14 条により、雇い入れたときに、賃金や教育訓練、福利厚生施設の利用などについて講じる措置の内容を説明する必要があります。本人から求められたときは、正社員などとの待遇の違いの内容と理由も説明します。
更新上限を設けるときの決まり
更新上限を設けるかどうかは会社が決めることですが、設ける場合は次の点を守ります。
途中で設けるときは理由を説明する
「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(平成 15 年厚生労働省告示第 357 号。2024 年 4 月に改正)第 1 条は、次の場合に、あらかじめその理由を労働者に説明することを求めています。
- 最初の契約を結んだ後に、更新上限を新たに設ける場合
- 最初の契約のときに設けていた更新上限を短くする場合
採用の段階で上限を決めて示しておけば、この説明の場面は生じにくくなります。
無期転換を避ける目的の雇止めは望ましくない
厚生労働省のリーフレットは、無期転換ルールの適用を免れる意図で、無期転換申込権が発生する前に雇止めをしたり、契約期間中に解雇したりすることは、労働契約法第 18 条の趣旨に照らして望ましいものではないとしています。
無期転換ルール
労働契約法第 18 条は、同じ使用者との有期労働契約が更新されて、通算の契約期間が 5 年を超えた場合に、労働者が申し込めば、期間の定めのない労働契約に転換されると定めています。使用者は申込みを承諾したものとみなされるので、断ることはできません。
- 通算の対象は、2013 年 4 月 1 日以降に始まった有期労働契約です
- 契約と契約の間に、原則 6 か月以上の空白の期間があれば、それより前の期間は通算しません(前の契約期間が 1 年未満の場合は、その長さに応じて短い期間が定められています)
- 転換後の労働条件は、別の定めがなければ、契約期間を除いて直前の有期契約と同じです
定年後に引き続き雇用される人などは、都道府県労働局長の認定を受ければ、無期転換申込権が発生しない特例(有期雇用特別措置法)があります。
雇止めのときの決まり
有期雇用の人の契約を更新しないこと(雇止め)にも、決まりがあります。
30 日前までの予告
雇止め等に関する基準第 2 条により、次のいずれかにあたる人の契約を更新しない場合は、少なくとも契約期間が満了する日の 30 日前までに予告します。あらかじめ更新しないことを明示していた場合は除きます。
- 契約を 3 回以上更新している
- 雇い入れの日から 1 年を超えて続けて働いている
予告の後や雇止めの後に、本人が理由の証明書を求めたときは、遅滞なく交付します(同基準第 3 条)。
雇止めが認められない場合
労働契約法第 19 条は、次のどちらかにあたる有期労働契約で、本人が更新を申し込んだのに、使用者が断ることが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、同じ条件で更新を承諾したものとみなすとしています。
- 過去に繰り返し更新されていて、雇止めが無期契約の解雇と社会通念上同じと見られるもの
- 本人が更新されると期待することに合理的な理由があるもの
採用のときに「長く働いてほしい」「更新は形だけ」などと説明すると、更新を期待する理由になり得ます。口頭の説明と、書面に書いた更新の基準や上限をそろえておくことが大切です。
契約期間中の解雇
労働契約法第 17 条第 1 項により、有期労働契約の期間中は、やむを得ない事由がある場合でなければ解雇できません。
採用する前の点検表
- 1 回の契約期間が、労働基準法の上限(原則 3 年)の範囲に収まっている
- 求人票に、契約期間、更新の有無、更新の判断の基準、更新上限の有無と内容を書いた
- 労働条件通知書に、同じ内容と、就業場所・業務の変更の範囲を書いた
- 昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口を、文書で示す用意がある
- 面接での説明と、書面の更新の基準・上限が食い違っていない
- 更新を重ねると通算 5 年を超える見込みの人について、無期転換後の労働条件を決めている
個別の契約の結び方や、自社の就業規則の定め方は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確かめてください。
まとめ
- 1 回の契約期間は原則 3 年まで(高度の専門的知識等を持つ人と 60 歳以上の人は 5 年まで)
- 募集の段階から、契約期間と、更新上限を含む更新の基準を示す
- 2024 年 4 月から、契約の締結時と更新時に、更新上限の有無と内容、就業場所・業務の変更の範囲を明示する
- 途中で更新上限を設ける・短くするときは、あらかじめ理由を説明する
- 通算 5 年を超えると、本人の申込みで無期労働契約に転換される
- 3 回以上更新した人や 1 年を超えて働いている人を雇止めするときは、30 日前までに予告する